生体は大小様々な区画に分かれ、各区画は、上皮細胞シートによる「上皮バリア」により、内部環境を外部からの摂動に対応させ、種々の生体機能を発揮する。上皮バリアは、タイトジャンクション(TJ)による上皮細胞間バリアと、上皮細胞アピカル膜によるアピカル面のバリアで形成され、物質移動の制限と選択的透過を行う。近年、TJの細胞間バリアとアピカル面のバリアが機能的に連携し、生体システムを構築する事例が明らかになってきた。前年度は、培養上皮細胞をモデルに、TJの裏打ちタンパク質がアピカル膜トランスポーターとして知られるNHE3と相互作用し、局在化を制御することを明らかにした。また、他の細胞系においても、TJと水チャネルが構造的・機能的に連携する事例を見出した。
本年度は、前年度見出したTJと水チャネルの連携についてin vitro 細胞系、in vivo マウス個体レベルで検討を進めた。in vitro 細胞系では、特定の条件下でTJ構築を誘導すると、水チャネルがTJ近傍に集積することを明らかにした。in vivo マウス個体レベルの解析においても、中枢神経系を対象に、TJ構築と水チャネルの局在制御を評価した。また、TJの裏打ちタンパク質とアピカル膜トランスポーターの相互作用を解析する過程で、新規TJ相互作用因子として細胞骨格関連因子を同定し、これまで知られてこなかったメカニカルなTJ構築/制御システムの提示にも貢献した。
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