研究実績の概要 |
タンパク質ニトロ化の網羅的定量解析系を構築するため、酵母を酸性条件下で亜硝酸処理したところ、酵母の全タンパク質のニトロ化レベルが顕著に亢進した。続いて、Fluorinated Carbon-tag(FCT)法(Proteomics, 15, 580-590, 2015)による解析を試みたが、ニトロ化タンパク質は同定できなかった。そこで、ニトロ化条件で処理したタンパク質抽出液をトリプシン消化し、直接LC-MS/MSに供したところ、複数のニトロ化タンパク質とニトロ化部位を同定した。また、同条件で処理した酵母の代謝物を解析したところ、多くの代謝物の細胞内含量が亜硝酸処理により変化したことから、タンパク質ニトロ化が代謝酵素の活性制御等に関与する可能性が示唆された。一方、タンパク質S-ニトロソ化を網羅的に解析するため、酵母タンパク質抽出液をNOドナーで処理し(in vitro)、ビオチンスイッチ法とLC-MS/MSに供したところ、数多くの代謝酵素がS-ニトロソ化されることが示唆された。続いて、既知および改良型のビオチンスイッチ法により、NOドナー処理した酵母から得たタンパク質抽出液(in vivo)を解析したが、タンパク質S-ニトロソ化は検出されなかった一方、システイン残基に別の酸化的修飾が起こっていることが示唆された。このことから、酵母細胞内ではNOによってS-ニトロソ化とは異なる酸化的修飾が起きる可能性が示された。 修飾タンパク質の定量方法については、解析プログラムの問題から15N-硫酸アンモニウムを用いた系では解析が難しいことが判明したため、アルギニン・リジン要求性株を構築し、安定同位体ラベルしたアルギニン・リジン含有培地で培養し、SILAC法により定量解析を行った。
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