研究実績の概要 |
20年度までに、ピルビン酸脱炭酸酵素Pdc1が、NOストレス条件下でニトロ化修飾を受けることを明らかにした。 そこで21年度に、アンバーコドン変異による人工アミノ酸取り込みタンパク質発現系を用いて、部位特異的にニトロ化したPdc1を調製し、酵素活性を測定した。その結果、157番目および344番目のチロシン残基(Tyr157およびTyr344)のニトロ化により、Pdc1の酵素活性が抑制されることを見出した。さらに、これらの部位のアミノ酸置換体を発現する酵母の解析から、NOストレス条件下において、Pdc1のTyr157、Tyr344のニトロ化を介して発酵が阻害されることを見出した。 一方、20年度までに、フルクトース-1,6-二リン酸アルドラーゼFba1が、NOストレス条件下でS-グルタチオン化(SGT化)されることを見出した。 そこで21年度に、精製酵素を用いた解析を行った結果、112番目のシステイン残基(Cys112)のSGT化により、Fba1の酵素活性が抑制されることを明らかにした。また、グルタレドキシンGrx1がFba1のSGT化を脱修飾し、活性を回復させることも見出した。さらに、代謝物の解析から、Fba1の基質であるフルクトース-1,6-二リン酸(FBP)とペントースリン酸回路(PPP)の中間体である6-ホスホグルコン酸が、NOストレス条件下で増加することを見出した。PPPで主に合成されるNADPHも、NOストレスにより増加した。一方、Cys112のアミノ酸置換によりSGT化が起こらないFba1変異体を発現する酵母は、NOストレスに感受性を示した。以上のことから、NOストレス条件下においては、Fba1のCys112が可逆的なSGT化を介して抑制され、代謝フローが解糖系からPPPへ変化することで、NADPHを増加させ、NOストレス耐性に寄与することが示唆された。
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