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2019 年度 実施状況報告書

近接依存性標識法TurblDによる, 細胞を殺さないカスパーゼ活性の解析

研究課題

研究課題/領域番号 19K16137
研究機関東京大学

研究代表者

篠田 夏樹  東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (30838397)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2021-03-31
キーワードカスパーゼ / TurboID / 近接依存性標識法 / ショウジョウバエ / 細胞死非依存的機能 / 組織サイズ
研究実績の概要

これまでの研究から, Caspase-3ファミリータンパク質であるDriceとDcp-1のうち, Dcp-1のみが細胞死非依存的にショウジョウバエの翅サイズを制御するとの結果を得ていた. そこで, DriceとDcp-1の機能的な違いを明らかにするために, CRISPR/Cas9法を用いてDriceとDcp-1のC末端それぞれにTurboIDをノックインしたショウジョウバエ系統を作出した. さらに, TurboIDによる近接依存性標識により, DriceとDcp-1それぞれの近傍に存在するタンパク質を評価したところ, 近傍タンパク質が異なることが明らかとなった. また, Dcp-1に特異的なカスパーゼの基質として, Acinusが報告されていた. そこで, 翅サイズに対するAcinus切断の寄与を検討した結果, Acinusの切断が翅サイズを制御する上で重要であることが明らかとなった. 以上の結果をまとめ, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America誌に論文を発表した.
さらに, 作出したショウジョウバエ系統を用い, DriceとDcp-1のそれぞれの近傍に存在するタンパク質をMS解析により網羅的に探索した. その結果, 翅の前駆体組織である翅成虫原基において, DriceとDcp-1のそれぞれに特異的なタンパク質群の同定に成功した. また, 同様の解析をショウジョウバエの頭部において行い, 翅成虫原基とは異なる頭部特異的な近傍タンパク質群の同定に成功した. 以上の結果から, DriceまたはDcp-1特異的及び組織特異的な近傍タンパク質が存在することが確認され, それらがカスパーゼの細胞死依存的/非依存的な機能の制御とその発揮に関与している可能性が示唆された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

2019年度では, 当初の目的としていた"Caspase-3ファミリータンパク質が細胞死非依存的にショウジョウバエ翅サイズを制御する分子機構の解明"を達成し, その成果を論文として発表することができた (Shinoda et al., PNAS, 2019). さらに, CRISPR/Cas9法を用いて作出した, DriceとDcp-1のC末端それぞれにTurboIDをノックインしたショウジョウバエ系統を用いて, DriceまたはDcp-1特異的及び組織特異的な近傍タンパク質が存在することを明らかにすることができた. 以上の結果を踏まえ, "近傍タンパク質がカスパーゼの細胞死依存的/非依存的な機能の制御とその発揮に関与する"という仮説を導くに至ったことから, 本研究課題は, 当初の計画以上に進展していると評価した.

今後の研究の推進方策

新たに導いた, "近傍タンパク質がカスパーゼの細胞死依存的/非依存的な機能の制御とその発揮に関与する"という仮説に立脚し, 今後の研究を進める. 具体的には, 翅成虫原基及び頭部で得られたDrice及びDcp-1特異的な近傍タンパク質の解析から, カスパーゼの新奇機能の発見を目指す. また, ショウジョウバエの成虫の脳では, 加齢依存的にカスパーゼの活性化及びアポトーシスが増加することが既に報告されている. 頭部に特異的なカスパーゼ近傍タンパク質に着目し, 加齢依存的なカスパーゼの活性化制御機構の解明を目指す. 一方で, TurboIDをノックインしたショウジョウバエ系統の解析を進める中で, そのボトルネックとなる部分も明らかとなってきた. 具体的には, 標識効率及び時間分解能の小ささが挙げられる. そこで, これらのボトルネックを解消する代替の解析法の導入も進める. 具体的には, TurboIDを融合したカスパーゼの大量発現及びAPEX2の導入を行う. 複数の近接依存性標識法を比較することで, ショウジョウバエに有用な近接依存性標識法を決定する.

次年度使用額が生じた理由

ショウジョウバエ系統の作出の費用に関して, 当初の想定よりも順調に作出できたことから未使用額が発生した. 発生した次年度使用額は, 作出したショウジョウバエ系統を用いたプロテオミクス解析及びその分子生物学的な解析の費用として計上する.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2019 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Dronc-independent basal executioner caspase activity sustains Drosophila imaginal tissue growth2019

    • 著者名/発表者名
      Shinoda, N., Hanawa, N., Chihara, T., Koto, A., Miura, M.
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America

      巻: 116 ページ: 20539, 20544

    • DOI

      10.1073/pnas.1904647116

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 基礎的な実行カスパーゼ活性はショウジョウバエの翅の成長を促進する2019

    • 著者名/発表者名
      篠田夏樹, 花輪望未, 千原崇裕, 古藤日子, 三浦正幸
    • 学会等名
      第28回日本CellDeath学会学術集会
  • [学会発表] Dronc-independent basal executioner caspase activity sustains Drosophila imaginal tissue growth2019

    • 著者名/発表者名
      Shinoda, N., Hanawa N., Chihara T., Koto A., Miura, M.
    • 学会等名
      Non-Apoptotic Roles of Apoptotic Proteins
    • 国際学会
  • [備考] 細胞を殺さない基礎的なカスパーゼ活性による器官サイズの制御機構の解明

    • URL

      https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/z0111_00010.html

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公開日: 2021-01-27  

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