研究実績の概要 |
これまでの研究から, Caspase-3ファミリータンパク質であるDriceとDcp-1のうち, Dcp-1のみが非細胞死性にショウジョウバエの翅サイズを制御するとの結果を得ていた. 2019年度には, DriceとDcp-1のC末端それぞれにTurboIDをノックインしたショウジョウバエ系統を作出した. TurboIDによる近接依存性標識により, DriceとDcp-1それぞれの近傍に存在するタンパク質が異なることが明らかとなった. また, Dcp-1に特異的なカスパーゼの基質であるAcinusの切断が翅サイズを制御する上で重要であることが明らかとなった. 以上の結果をまとめ, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America誌に論文を発表した. さらに, 作出したショウジョウバエ系統を用い, DriceとDcp-1の近傍に存在するタンパク質をMS解析により網羅的に探索した. その結果, 翅成虫原基において, それぞれに特異的なタンパク質群を同定した. 2020年度には, DriceとDcp-1の細胞死誘導能について検討した. その結果, Driceの過剰発現は細胞死を誘導しない一方で, Dcp-1の過剰発現は細胞死を誘導することが明らかとなった. DriceとDcp-1の各タンパク質ドメインを交換したキメラタンパク質の解析から, プロドメインではなく, 比較的配列の類似する酵素ドメインが, 過剰発現による細胞死誘導能の違いを説明するに重要であることが明らかとなった. 以上の結果から, 細胞死性, 非細胞死性の両方の局面において, Caspase-3ファミリータンパク質の使い分け機構が存在することが示唆された.
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