研究課題/領域番号 |
19K16138
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山元 孝佳 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (70724699)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 頭部形成 / 発生・形態形成 / Toll様受容体経路 / 細胞分化 / アフリカツメガエル |
研究実績の概要 |
Toll様受容体経路(以下、Toll経路)は自然免疫応答において重要な役割を担っている。一方初期発生においては、Toll経路関連因子の発現量は多いものの、その役割については神経細胞サブタイプの分化に関わることが知られるのみでほとんどわかっていない。そこで本研究では、Toll経路の因子の1つであるIrak1を用いて、この経路が脊椎動物の初期発生で担う役割とその作用機序を明らかにすることを目的とした。 本研究ではこれまでに、Irak1がアフリカツメガエル胚の頭部形成に必須であることを明らかにし、このIrak1の機能には自身のkinase活性が必要であることを明らかにしてきた。そこで今年度はIrak1の作用機序を明らかにすることにした。 Irak1を過剰発現させた際に、canonical Wntシグナル経路の標的遺伝子であるSiamoisやXnr3の発現が誘導されることがわかった。このことから、Irak1がWnt経路を制御している可能性が考えられた。Wnt経路の活性化は頭部誘導の有無によって、容易に判別できるため、これを指標としてIrak1のWnt経路への作用機序を調べた。Wnt経路の転写制御因子であるbeta-cateninを注入すると頭部が異所的に誘導されるが、このときIrak1をノックダウンしても特に影響は見られなかった。一方でbeta-cateninを抑制するGSK3βを注入した際には頭部誘導が抑制されるが、Irak1の共注入によりその表現型は回復した。これらの結果からIrak1はWnt経路でGSK3βよりも上流に作用することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Irak1がWntシグナル経路を制御し得ること、またその作用点についてもある程度絞ることが出来た。しかし新型コロナウイルス感染症対策の関係で、思うように実験を行なうことが出来ず、Irak1の結合因子や基質等は未だ同定出来ていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は引き続き、Irak1がWnt経路をどの因子を制御するのかを明らかにする。またここで同定した因子がIrak1を直接的に結合するのか、kinaseの基質となるのかを生化学的に調べ、Irak1による頭部誘導の作用機序を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症対策の関係で、思うように実験が出来ず、学会も延期等が多く、今年度の使用額が予定よりも少なくなったため。
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