研究課題
若手研究
本研究では、自然免疫応答で必須なToll様受容体経路(Toll経路)の因子、Irak1の初期発生での役割を調べた。ツメガエル胚でIrak1を異所発現させるとWntシグナル経路の標的遺伝子であるSiamoisやXnr3が発現し、頭部が誘導された。Irak1をノックダウンすると頭部形成が部分的に阻害された。またIrak1はWnt経路のGSK3β発現による頭部形成抑制を回復させたが、その上流で機能するDishevelledを阻害した際には回復できなかった。すなわちIrak1は頭部形成に必要で、Wnt経路においてDishevelledあるいはその上流に作用していると考えられる。
発生生物学
本研究ではToll経路からWnt経路に至る新たな分子経路を発見した。これは、発生・自然免疫の基礎的知見として重要である。また免疫系のがん細胞ではToll経路によるWnt経路の活性化が想定されている (Ma and Hottiger, 2016)が、その全貌は未だ不明である。本研究の成果は、このような医学的に重要な現象の分子機構解明につながる可能性を併せ持っており、実用・応用面での波及効果も期待できる。