研究課題
多細胞生物の器官は、その機能に応じた様々な三次元構造をとるが、肺胞や腎臓のボーマン嚢にみられるような球形もその基本構造の一つである。実際の生体内では、真球形をとるわけではなく、各組織での機能発現に適した半球や楕円体に調節されていると考えられるが、そのしくみはよくわかっていない。本研究では、ゼブラフィッシュの左右差決定器官クッペル胞(KV)の楕円体形成をモデルとし、器官の楕円体形成と機能(ノード流・左右差)の定量的な解析・理解を目指す。本研究では特に、予備実験から得られた以下の仮説1)KV内腔の3次元変形が、正常なノード流の生成に必要である、2)ノード流がKV内腔の3次元形態を制御している、の検証を通じ、クッペル胞における楕円体構造とその機能との相互作用を明らかにすることを目的とする。本年度はまず、内腔変形および個々のKV細胞の形態変化を定量するためのトランスジェニック(Tg)ゼブラフィッシュ樹立を試みた。sox17プロモータ下でLifeact-RFPを強く発現する系統を作出することで、細胞の形態変化・収縮動態を観察することが可能となった。現在、このTg胚でタイムラプス画像を取得し、KVが楕円体へ変形する際の内腔面の曲率やその時間変化の算出方法について検討している。
2: おおむね順調に進展している
次年度に行う定量解析に必要な実験系の構築がある程度できたので、おおむね順調に進展していると考えている。
ライブイメージングデータの解析を進め、KVが楕円体へ変形する際の、内腔面の曲率とその時間変化を算出する。また、このときの構成細胞の頂端面の異方性、面積、収縮動態などの特徴について時間変化を抽出する。算出・抽出した項目どうしの関係性を主成分分析等により検証する。同時に、変形したKV内腔のかたちが、ノード流を制御するしくみについても解明を目指す。KVに外力を加えて内腔の変形を操作し、同一胚でノード流・左右差を測定する予定である。まずは、物理的に周囲組織の変形を介して間接的に操作の実験系の構築を行う。
KV形態の物理的操作の方法を検討するなかで、当初の想定よりもより幅広い方法の検討を次年度に引き続き行う必要が生じ、これに係る消耗品の費用を次年度に繰り越す。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
Current Biology
巻: 30 ページ: 670~681.e6
10.1016/j.cub.2019.11.089