研究課題/領域番号 |
19K16145
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
山田 壮平 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特任助教 (40815528)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ゼブラフィッシュ / cell extrusion / 発生・分化 |
研究実績の概要 |
Arp2/3結合タンパク質N-WASPのC末から50アミノ酸残基 (N-WASP-CA) は、Arp2/3のdominant negative formとして働くことが報告されている (Icha et al., 2016)。令和1年度の研究計画において、Gal4-UASシステムを用い、ゼブラフィッシュ胚上皮組織 (enveloping layer; EVL)にArp2/3のdominant negative formをモザイク状に発現を誘導する実験系の確立を行った。具体的には、EVL特異的に発現するKrt4のプロモーター下流でGal4を発現するTgゼブラフィッシュ受精卵 に、UAS下に蛍光タンパク質mKO2と、N-WASP-CAをP2A配列で繋いだプラスミドDNAを導入することで、EVLにモザイク状にArp2/3機能阻害を行った。この観察系を用い、共焦点レーザー顕微鏡下で、隣接するmKO2陰性細胞(正常細胞)とmKO2陽性細胞(Arp2/3機能阻害細胞)の相互作用をライブイメージングにより観察した。ライブイメージングの結果、正常細胞に囲まれたArp2/3機能阻害細胞が、EVL層から基底面側に排除される様子が観察された。基底面側への細胞の排除はmKO2のみをモザイク状に導入したコントロール胚では観察されないこと、胚全体でArp2/3の機能阻害を行っても排除の様子は観察されないことから、正常細胞との直接的な相互作用により細胞の排除が誘導されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Tgラインを樹立し、ゼブラフィッシュ胚発生期において正常細胞と機能阻害細胞との相互作用をイメージングすることに成功したため、おおむね順調と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、生体組織におけるFAJsの機能を明らかにするため、FAJsの制御分子であるArp2/3の機能阻害実験を行った。EVLにモザイク状に誘導したArp2/3阻害細胞は、周囲の正常細胞によって、排除されることが観察された。上皮層からの細胞の排除は、細胞競合と呼ばれ、組織の恒常性の維持や、腫瘍形成の抑制機構として働くことが知られている。これらのことは、FAJsが細胞競合の制御に関与する可能性を示唆しており、形態形成機構の理解のみならず、細胞ー細胞間の力学的を介した上皮組織の恒常性維持機構の解明につながると考えている。 FAJsの形成には、Arp2/3の他に細胞間接着分子カドヘリンが関与する。そこで、EVLに発現するCadherin (Cdh1) のdominant negative formを発現するトランスジェニック(Tg)ラインを樹立し、正常細胞とCdh1機能阻害細胞の相互作用のライブイメージングを行い、FAJsを介した細胞間相互作用の破綻が形態形成や細胞排除に関与するか明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和1年度にフェムト秒レーザー衝撃力による細胞間の押し合う力の定量評価を行うため、原子間力顕微鏡を用いた衝撃力の校正を行う予定だったが、フェムト秒レーザーの故障などのトラブルがあり、研究計画を変更し、Tgゼブラフィッシュ の解析を行うこととしたため、未使用額が生じた。このため、未使用分を次年度の原子間力顕微鏡を用いた衝撃力の校正を行うこととし、原子間力顕微鏡を用いた衝撃力の校正を行う。
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