研究課題/領域番号 |
19K16154
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研究機関 | 公益財団法人実験動物中央研究所 |
研究代表者 |
岸本 恵子 公益財団法人実験動物中央研究所, マーモセット医学生物学研究部, 研究員 (40616744)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マーモセット / 初期胚発生 / Oct3/4 enhancer / 胚性幹細胞 / naive型 / prime型 |
研究実績の概要 |
本研究では霊長類胚性幹細胞がどうすればキメラを作製できるのかを解明したい。その為にマウスで発現制御機構がnaive型とprime型で異なることが明らかになっている、Oct3/4エンハンサーに着目し、コモンマーモセット胚、胚性幹(ES)細胞を用いて、レポーターアッセイを行う。そこで、本年度は、レポーターアッセイを行う為に、①マーモセットOct3/4-GFP ES細胞の作製と、② Oct3/4△PE-GFPによるembryoにおけるレポーターアッセイを可能にする為、2種類のOct3/4 エンハンサーレポーター遺伝子(Oct3/4 enhancer- promoter-KusabiraOrange; KO, Oct3/4△PE enhancer-promoter-GFP)を発現するレンチウイルスの作製を行った。まず、①については初めにCRISPR-Cas9システムを利用したtargetingによって、作製予定であったが、マーモセットES細胞でTargetingが起こる効率が低かったため、Targeting法ではGFP陽性細胞が得られなかった。そこで、Pitch法によってGFP遺伝子をES細胞のゲノムに挿入する方法に変更した。その結果、GFP陽性細胞が観察され、目的のマーモセットOct3/4-GFP ES細胞は得られた。引き続き、得られたこのES細胞株を用いて、Oct3/4 △PE-GFP ES細胞株の作製も行う予定である。また、②についてはレンチウイルス作製用の2種類のプラスミドのコンストラクションは完了し、293FTにてレンチウイルスを作製する予定である。さらに、今後はOct3/4エンハンサーの発現制御機構の相違点を利用し、新たなマーモセット胚性幹細胞の樹立を試み、この新たに樹立した胚性幹細胞がキメラを作製するのか解析をする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、マーモセットOct3/4△PE-GFP ES細胞株を得る為に、Oct3/4遺伝子の下流にGFP遺伝子の挿入を行った。具体的には、Oct3/4遺伝子の下流をCRISPR-Cas9システムで切断し、homologous recombinationによってGFP遺伝子を挿入するtargeting法で試みた。3 kb程のHomology armをもつTargeting vectorを作製した。その後、CRISPR-Cas9システム用のvectorと共にリポフェクション法もしくはエレクトロポレーション法よってトランスフェクションを行なった結果、GFP陽性細胞は出現してこなかった。Targeting vectorは10 kbを超えており、トランスフェクション効率の低下も疑われたので、Homology armを必要とせず、vector作製が比較的容易な、Pitch法に切り替えて同様にトランスフェクションを行なった。その結果、GFP陽性細胞は出現し、Oct3/4-GFP ES細胞株は得られた。引き続き、この得られたOct3/4-GFP ES細胞株を用いて、Oct3/4△PE-GFP ES細胞株を作製する予定である。次に、Oct3/4△PE-GFPによるembryoにおけるレポーターアッセイを可能にする為、2種類のOct3/4 エンハンサー-レポーター遺伝子をもつレンチウイルスの作製を行った。一つはprime型でも発現可能なOct3/4 enhancer- promoter-KOをもつvector、もう一つはnaive型でのみ発現可能なOct3/4△PE enhancer-promoter-GFPをもつvectorである。現在、これら遺伝子を発現するレンチウイルス作製用のプラスミドのコンストラクションは完了し、293FTにて高タイターのレンチウイルスを作製、調整予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られたOct3/4-GFP ES細胞株を用いて、Oct3/4△PE-GFP ES細胞株を作製する。具体的には、PEエンハンサー箇所に薬剤体制遺伝子を挿入し、PE配列を欠失させた細胞株を作製する予定である。この作製したOct3/4△PE-GFP ES細胞株はprime状態ではGFPを発現しないはずである。これまでに報告されたマーモセット胚における多能性維持に最適なinhibitor添加の条件 (Boroviak T, Dev Cell., 2015)などを参考に、この得られた細胞株からGFPが発現する条件、すなわちnaive型条件を検討する。また、本年度得られたレンチウイルス作製用のプラスミドから早急にレンチウイルスを作製し、マーモセット胚にレンチウイルスを感染させる。感染させた胚は、これまでにマーモセット胚で確立している着床を模した長期培養法を用いて培養する。その後、蛍光発現からBlastocystから着床後胚(ICM-Epiblast)におけるOct3/4遺伝子の発現挙動を観察する。また、着床前胚から着床後胚におけるOct3/4遺伝子の発現データを取得する為に、Blastocystから着床後胚におけるOct3/4遺伝子の発現解析も免疫染色、qPCRにより行う予定である。さらに、蛍光発現観察の結果、distal enhancer(DE)とproximal enhancer(PE)の発現制御の詳細がマーモセットにおいて明らかになれば、ES細胞株を用いて検討したnaive型条件を用いて、新たなES細胞の樹立を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度はマーモセット胚を扱う実験が増えてくる予定である。胚培養などに必要な物品の購入を主に行う予定である。また、ES細胞培養関連試薬も購入する予定である。
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