研究実績の概要 |
本研究では霊長類胚性幹細胞がどうすれば生殖系列キメラ個体を作製できるのかを解明したい。本年度は生殖系列キメラ能を有するnaive型細胞を得るため、マーモセット胚性幹(embryonic stem, ES)細胞を用いて培地検討を行なった。まず、すでにヒト多能性幹細胞のnaive化で報告されている培地条件をマーモセットES細胞に適用した。具体的には、PD0325901 (MAPK阻害剤)、Go6983 (PKC阻害剤)、XAV939 (WNT阻害剤)やhLIF, IL6 (JAK/STAT促進剤) をN2B27培地に加えたPGXLIと、PD0325901 (MAPK阻害剤)、S B590885 (RAF阻害剤)、IM-12 (GSK3β阻害剤)、WH-4-023 (Src阻害剤)、Y27632 (ROCK阻害剤)やhLIF, IL6 (JAK/STAT促進剤) , Activin A (TGFβ/SMAD促進剤)をN2B27培地に加えた5iLAIを用いた。培養した結果、両条件ともマーモセットES細胞は、マウスES細胞でよく見られるドーム型に近いコロニー形態を示したが、増殖速度はとても遅かった。そこで、次に、基礎培地をN2B27培地からPrimate ES medium (Repro cell社)に変え、再びマーモセットES細胞の培養を試みた。その結果、マーモセットES細胞はドーム型に近いコロニー形態を示しながら、十分な増殖速度で増殖した。次に、免疫染色を行い、Naive型のマーカーとして知られているKLF17が従来の培地条件で維持したES細胞では発現しないが、Naive化したES細胞では発現していることを確認した。現在、他のマーカー遺伝子についてもqPCRにより解析中である。
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