臓器が適切な管腔構造へと発生していく過程では、内腔を覆う上皮組織と周縁の間充織が互いに相互作用することが必要不可欠である。これまでの臓器形成研究は、上皮組織を中心に展開されてきた。その一方で、臓器固有の間充織組織を形成する仕組みについては、あまり注視されてこなかった。申請者は、先行研究において、マウス気管の発生過程では、間充織組織が正常に分化、極性化することによおって、管腔構造の長さと太さが段階的に、決定づけられていることを明らかにした。さらに、間充織細胞の極性化にはWnt signalingの活性化が必要であることを報告した。本研究課題では、マウス遺伝学によって、Wnt signalを介した上皮―間充織相互作用による、間充織細胞の放射状極性の制御機構の解明を目指している。さらに、ヒト多能性幹細胞(ES細胞・iPS細胞)を使った再構成論的な実験系の確率を目的としている。 臓器発生は生体の深部でおこる現象であるため、極性化といった動的な変化を直接解析することは困難であるとされてきた。そこで、本研究課題では、ヒトES細胞およびiPS細胞から上皮細胞および間充織細胞をそれぞれ誘導する系の確立に取り組んだ。また、scRNA解析によって樹立した間充織細胞における遺伝子発現、Wntを初めとしたシグナル伝達経路の活性化について1細胞レベルで解析を行った。さらに、これらの細胞を用いて間充織細胞の極性化を観察可能な実験系の確立に挑戦している。
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