研究課題
本研究では、植物の細胞間隙形成の分子機構を明らかにするために、苔類ゼニゴケを主な材料として研究を進めている。ゼニゴケの気室-気室孔とシロイヌナズナの海綿状組織-気孔形成の分子機構を明らかにすること、両者を比較し被子植物からコケ植物を貫く間隙形成の共通性と多様性を見出すことを目的としている。当該年度は、スクリーニングのための条件検討を名古屋大学とランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)のライブラリーセンターと共同して行なった他、シロイヌナズナで作用が明らかになっている化合物の一部をゼニゴケに処理し、効果の確認を行なってきた。一部の化合物で共通の作用があることが示唆されてきた。今後は、シロイヌナズナで作用が既知の化合物の作用を確認していくとともに、スクリーニングを継続して行なっていく予定である。また、シロイヌナズナで既に単離していた制御因子について、表現型の解析や機能解析を行なった。免疫沈降法と質量分析については、シロイヌナズナについて、該当する細胞系譜の単離を行い、質量分析を行うのに適した濃縮方法などの検討を、ITbMのタンパク質質量分析センターと共同して行なった。また、ゼニゴケについては特異的な発現を誘導するプロモーターの制御下で関連する遺伝子を発現する株の作出を行なった。また、ヒートショックや化合物処理によって発現を誘導できる株の作出にも既に着手した。次年度はこれらの株を用いて免疫沈降法を行うとともに、解析したい細胞系譜の単離、質量分析を行う、
2: おおむね順調に進展している
本研究では、①間隙形成制御因子の単離を、苔類ゼニゴケで行い、②被子植物シロイヌナズナの気孔や海綿状組織での機能解析を行うとともに、③1細胞系譜で免疫沈降法と質量分析を行う予定である。ゼニゴケの間隙形成の変異体は既に複数単離に成功している他、追加のスクリーニングも既に実施している。シロイヌナズナにおいては関連因子の一つの表現型解析や機能解析を行い、現在、国際誌に論文の投稿を準備している。免疫沈降と質量分析についても必要な機関と良好な連携関係にあり、シロイヌナズナとゼニゴケの双方で、適切な解析条件を構築しつつある他、ゼニゴケにおいては適した形質転換体の作出も行なっているため、当該年度は概ね順調な進捗と考えられる。
取得した変異体について、次世代シーケンサーを用いた解析を行い変異箇所を特定し、原因遺伝子の同定を行う。制御因子の単離として、高効率なスクリーンニング系を用いた気室形成に異常がある株の取得を行う。単離した因子の気孔や海綿状組織における機能解析として、ゼニゴケの気室形成の制御因子がシロイヌナズナの気孔や海綿状組織の形成に対してどのような機能を持つかを解析するために、単離した因子と相同性の高い因子のノックアウト株について気孔や海綿状組織の観察を行い、被子植物の間隙形成における機能を解析する。表現型の観察を行うために、未成熟な葉が成熟していく過程で海綿状組織の間隙がどのように発生するかを寒天やプラスチックに包埋しての切片作成とともに、ナイルレッド-シリコンオイル染色法で染色して行う光学切片作成を用いて行う。前述のように、シロイヌナズナおよびゼニゴケで1細胞系譜の組織単離を行うことができつつあるので、確立した条件でタンパク質質量分析を行い、関連因子の単離を目指す。
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