本研究の目的は、気室-気室孔と海綿状組織-気孔形成の分子機構を明らかにすること、両者を比較し、被子植物からコケ植物を貫く間隙形成の共通性と多様性を見出すことである。 目的の達成のために、①ゼニゴケの高効率なスクリーンニング系を用いて気室形成に異常がある株の取得 (制御因子の単離)、②単離した因子のシロイヌナズナにおけるホモログについてノックアウト株を用いて気孔や海綿状組織における機能解析(機能の比較)、③間隙細胞系譜での免疫沈降法とタンパク質質量分析による単離した因子との相互作用因子の単離 (1細胞系譜での相互作用因子単離)を行ってきた。 今年度は、いくつかの気室形成異常株について、リシーケンスを行い、原因遺伝子を絞り込みつつあるほか、他に気室形成に影響を与えうる因子についてもいくつかの候補をえた。 また、組織特異的な共免疫沈降法とタンパク質質量分析によって、気室形成因子とされる因子と相互作用しうる因子の候補を新たに絞り込んだ。これらの候補因子は、植物体全体を用いて同様の操作を行った際には得られなかったものであり、少量かつ組織特異的または一時的にしか発現しない因子の寄与がありうると考えた当初の仮説を支持する結果であった。 また、被子植物において、ゼニゴケの間隙や孔の形成因子がどのような働きをしているか調べるために、ノックアウト株について特に細胞壁成分や力学的特性についてより詳細な解析を行い、細胞壁の成分や力学的特性が孔の開閉などに重要であるということをさらに強く裏付けることができた。
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