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2021 年度 実施状況報告書

膜電位の可視化による植物の膜電位シグナリング機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K16164
研究機関名古屋大学

研究代表者

吉成 晃  名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 学振特別研究員(PD) (00829872)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード膜電位プローブ / シロイヌナズナ / 脱分極 / 環境応答 / 蛍光イメージング
研究実績の概要

近年、植物の細胞間情報伝達メカニズムとして「膜電位の変化」が注目されている。特に傷害に伴う膜電位の変化は傷害を受けた部位から離れた部位まで伝達され、組織・器官間の高速・長距離シグナル伝達機構として機能することが示されている。また、膜輸送タンパク質を介した物質輸送には、プロトン勾配や膜電位が密接に関わっていることから、膜電位の大小や局在が細胞毎に多様化している可能性がある。
本研究では、(1) 植物の膜電位変化を可視化する新規の蛍光タンパク質膜電位プローブ (Plant-GEVI) の開発、(2) Plant-GEVIを用いて、個体・細胞レベルでの膜電位イメージング解析、(3) Plant-GEVIを用いた根の膜電位マップの作製を通して、植物の膜電位制御と膜電位を介した長距離膜電位シグナリング機構を理解する。
Plant-GEVIの候補としてシロイヌナズナに導入したrASAP3は小胞体に局在し、当初期待していた細胞膜局在性を示さないことがわかったが、rASAP3は細胞膜脱分極を誘導するL-グルタミン酸処理によって蛍光輝度が低下することがわかった。その後の解析によってこの蛍光輝度の変化は細胞質pHの変化に依存したものであり、膜電位変化を捉えたものではない可能性が高いことがわかった。
現在は、一般的な蛍光タンパク質を用いないGEVIを用いることで細胞質pH変化の影響を受けないPlant-GEVIの探索を進めている。その候補として、ロドプシン型GEVIであるArchon1を植物に発現させるコンストラクトを作製した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

Plant-GEVIの候補としてASAP3にロングストークスシフト型mAppleを融合したrASAP3を作製し、植物体における発現と膜電位に対する反応性を評価した結果、rASAP3は小胞体膜局在を示し、脱分極によって蛍光量が低下することが明らかになった。バッファーやプロトノフォアを用いた解析により、この脱分極時の蛍光量変化は、rASAP3がもつcpGFPのpH感受性に依存するのものであることがわかり、膜電位変化を精密に捉えるセンサーとしては用いることができないと判断された。これまで試してきたFlicR1などの他のGEVIについても、pH変化による蛍光量変化と膜電位変化による蛍光量変化を区別することができていない。

今後の研究の推進方策

pH変化と膜電位変化を区別できないという問題を解決するための新たな方策として、ロドプシン型GEVIなど、蛍光タンパク質によらないGEVIを用いることにした。ロドプシン型GEVIの一つ、Archon1の植物発現プラスミドを作製しており、現在植物体における発現と反応性を確認しているところである。

次年度使用額が生じた理由

詳細なイメージング解析の結果、植物個体における膜電位変化にともない、細胞質pHが大きく変化することを突き止めた。そのため、当初計画していたFlicRやASAP3といった蛍光タンパク質に依存したGEVIではなく、ロドプシン型GEVIを用いる必要性が生じた。そこで、当該年度はロドプシン型GEVI発現コンストラクトの作製に注力し、詳細な解析は次年度に延期することとした。また学会発表についても延期した。
次年度は、主に植物の栽培とイメージング解析にかかる消耗品と学会発表に研究費を用いる。

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公開日: 2022-12-28  

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