研究課題/領域番号 |
19K16171
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
山内 翔太 山口大学, 大学院創成科学研究科, 学術研究員 (70838052)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | フォトトロピン / 青色光 / H+-ATPase / デンプン |
研究実績の概要 |
植物は青色光により気孔孔辺細胞の葉緑体内のデンプンを分解し浸透物質を供給することにより気孔開口を促進すと考えられている。しかし、その分子機構や生理学的意義については不明である。申請者らは気孔開口に関与する因子を同定することを目的にリン酸化プロテオーム解析を行い、青色光によりリン酸化されるE3ユビキチンリガーゼBEC1 (BLUE LIGHT E3 COMPONENT1)を同定した。bec1変異体の気孔における表現型を調べたところ、変異体では表皮、生葉における青色光依存の気孔開口が阻害されていた。植物は孔辺細胞葉緑体のデンプンを青色光により分解して、気孔開口に必要な浸透物質を供給する。bec1変異体におけるデンプン分解を調べたところ、変異体ではデンプン分解が阻害されていた。これはBEC1が青色光によるデンプン分解の鍵因子であることを示唆する。 これまでに青色光依存のデンプン分解には青色光受容体フォトトロピンによるBLUS1キナーゼを介したH+-ATPaseの活性化が必要であることが示されている。bec1変異体における青色光によるH+-ATPaseの活性化を調べたところ、これは正常であったことから、BEC1がH+-ATPaseからデンプン分解に至る情報伝達に関与する可能性が考えられた。そこでH+-ATPase活性化剤フジコッキン(Fc)によるデンプン分解を調べたところ、予想に反してbec1変異体ではFcによるデンプン分解は正常であることが分かった。これはBEC1がH+-ATPaseの活性化とは別の情報伝達により、デンプン分解を制御することを示唆する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
bec1変異体の気孔開口とデンプン分解に関する表現型を詳細に解析し、BEC1の情報伝達の位置を明らかにした。さらに研究に必要な形質転換体植物の作製も滞りないため、以上の評価とした。
|
今後の研究の推進方策 |
Phos-tag PAGE法により孔辺細胞内におけるBEC1の青色光依存のリン酸化を調べる。またこのリン酸化がフォトトロピンに依存するかを調べる。さらに非リン酸化を発現する植物を作製し、BEC1のリン酸化がセリン残基のリン酸化によるものかを調べる。疑似リン酸化体を作製し、その表現型を調べる。これらによりBEC1のリン酸化の意義を明らかにする。 E3ユビキチンリガーゼとしての機能を破壊したBEC1を導入した形質転換体を作製し、気孔開口とデンプン分解を調べる。これにより気孔開口・デンプン分解にBEC1リガーゼが必須であるかを調べる。
|