研究課題/領域番号 |
19K16173
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
竹中 悠人 立命館大学, 生命科学部, 助教 (70816149)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 植物細胞壁 / 多糖 / ペクチン / ラムノース転移酵素 / ラムノガラクツロナン-I |
研究実績の概要 |
本研究は、地上最大のバイオマスと呼ばれる植物細胞壁の主成分ペクチンの生合成酵素遺伝子に着目し、ペクチンの分子機能を明らかにすることを目的としている。ペクチンを構成するドメインの一つであるラムノガラクツロナン-I(RG-I)の機能は特に解明が進んでいない。そこで、RG-I主鎖の生合成酵素であるRG-Iラムノース転移酵素(RRT)に着目し、そのノックアウト変異体を観察することでRG-Iドメインの機能解明を試みた。当初、RRT遺伝子はシロイヌナズナに4つ存在することが考えられていたが、2020年度に入り、系統樹上でRRT1-4の隣接クレードに位置するAT5G01100 (FRB1)がRRTであることが生化学的に証明された(論文投稿済み)。このことから、RRT遺伝子は少なくとも10個存在する可能性が考えられた。 そこで当初の予定を変更し、まず残りの5つの遺伝子産物もRG-I:ラムノース転移酵素であることの確認を行った。RRT候補遺伝子を異種発現し、RG-I:ラムノース転移酵素活性を測定した。発現ホストはペクチンを持たない動物細胞HEK293T細胞を用いた。その結果、3遺伝子でタンパク質の発現と酵素活性が検出され、上記予想を強く支持する結果が得られた。 次に全てのRRT遺伝子の発現部位を調べた。花茎やロゼッタ葉といった組織では多くのRRT遺伝子の発現が確認された。一方、花器官では3つのRRT遺伝子が中心的に発現していることも観察された。RG-Iの分子機能を明らかにすべく、今後はこれら3つのRRT遺伝子のノックアウト変異体を作出し、花器官の形成などの表現型を観察する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酵素活性測定法を用いることで、生化学的にRRT遺伝子を複数同定した。この結果からRRT遺伝子の多様性を提唱することができた。また、RG-I分子機能解明のためノックダウンすべき遺伝子を改めて絞り込むことができたため、概ね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は発現が確認されていない2つのRRT候補遺伝子を動物細胞で異種発現し、酵素活性を確認する。RRT遺伝子はこれまでにサイトメガロウイルスプロモーター制御化での発現が複数認められたため、今回も同じ発現システムを用いる予定である。タンパク質の発現が確認されない場合にはCAGプロモーターを持つベクターを用いる。タンパク質量を確保するため、FreeStyle HEK293細胞を用いる準備も進行している。RG-Iオリゴ糖に対するラムノース転移酵素活性が確認され次第、生化学的な特徴の解析も行う。具体的には、基質特異性(RG-Iオリゴ糖の長さ、UDP糖の種類)や金属イオン要求性などを解析する。 次に、RG-Iの生体内での機能を明らかにすべく、花器官に注目した分子生物学的な解析を行う。花器官で特に発現が高いRRT遺伝子(RRT2、AT2G37980、AT1G22460)をノックダウンした多重変異体を作出する。変異体の成長発達に注目し、野生型との表現型の変化を時間を追って観察する。異常な表現型が観察された組織においては、抗RG-I抗体を用いて表現型とRG-Iの存在量の関係性を結びつける。
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