研究課題/領域番号 |
19K16176
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤森 千加 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (50750775)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | FSH / LH / ゲノム進化 |
研究実績の概要 |
本研究では、重複遺伝子fshb, lhbをモデルに進化上での発現分化のメカニズムを明らかにすることを目的としている。当該年度では、共発現種と別発現種でのfshb・lhb発現細胞の対応関係を明らかにするために、fshb・lhb共発現種であるポリプテルスと、別発現種であるガーの上流配列を用いた遺伝子組換え(Tg)メダカを作成した。その結果、ポリプテルスfshb上流配列に蛍光タンパク質をつないだTgメダカとガーlhb上流配列に蛍光タンパク質をつないだTgメダカでは脳下垂体に蛍光が確認され、それぞれメダカのfshb遺伝子、lhb遺伝子に相当する領域であると考えられた。ガーlhb上流配列に蛍光タンパク質をつないだコンストラクトについては、これまでにエンハンサーが含まれていることが明らかになっているメダカlhb上流配列に蛍光タンパク質をつないだコンストラクトと合わせてそれぞれTgマウスを作成中である。Tgマウスの作製・解析については共同研究者である高田修治博士と木村敦博士と協力して進めている。 また、lhbの転座先で獲得した調節配列を調べるために、ポリプテルスcox20遺伝子の上流3kbを蛍光タンパク質につないだコンストラクトを作製、Tgメダカを作出したが、脳下垂体に蛍光が見られなかった。したがって、ポリプテルスcox20上流3kbには転座先で獲得する調節配列は含まれていなかったことが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では、fshb・lhb発現細胞の対応関係を明らかにするために、Tgメダカの作成を5系統作成し、解析を行った。その結果、2系統ではエンハンサー領域を含むTgメダカが作出できたが、残りの3系統ではエンハンサー領域が含まれていなかったため、脳下垂体での蛍光を観察できなかった。これらの系統に関しては、細胞株でのエンハンサー探索を行うとともに、別種のゲノム配列を用いることで対応している。エンハンサー領域を含んでいることが明らかになったコンストラクトについては、次の段階としてTgマウスの作出にすでにとりかかっている。したがって、いくつかの改善点はあるものの、おおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
Tgマウスの作成については上記協力者と協力して引き続き行い、解析を進める。 蛍光の観察できなかったポリプテルスlhb遺伝子上流配列に蛍光タンパク質をつないだTgメダカでは、上流配列にエンハンサー領域が含まれていなかったと予想される。そこで、マウスゴナドトロフ由来の細胞株を利用して、ポリプテルスlhbのエンハンサー探索を行う。並行して、同じ共発現種であるマウスのlhbゲノム領域を含む人工染色体(BAC)クローンを入手し、マウスlhbゲノム-GFPコンストラクトを作成し、共発現種の発現パターンを確認する。 また、lhbの転座先で獲得した調節配列を調べるための実験でも同じ共発現種であるマウスのBACクローンを利用する。マウスのcoxゲノム上流領域を含むBACクローンを入手し、マウスcoxゲノム-GFPコンストラクトを作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度は研究遂行に関わる予算について、物品費、シーケンス解析費用などをあわせて予定通り使用した。また、旅費に関して、当該研究に関する打ち合わせのために出張に行ったが、学会での研究発表では別研究課題の内容も含んでいたため、本研究の予算を使用しなかった。そのため、旅費として使用した金額が計上分よりも少なくなった。本年度は学会に参加し、当該研究の内容を中心に発表する予定のため、前年度の旅費分と合わせて計上する。
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