研究課題/領域番号 |
19K16178
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
山口 陽子 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 助教 (70801827)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ヌタウナギ / 環境適応 / 体液調節 / 内分泌系 / 下垂体 / 心臓 |
研究実績の概要 |
本研究は、円口類ヌタウナギにおける個体・細胞レベルの体液調節機構とその内分泌制御について検証することを目的とする。これまでに、既知の体液調節関連機能分子群(各種輸送体ならびに下垂体前葉/後葉ホルモン受容体)のホモログをヌタウナギで同定し、その局在を明らかにしてきた。研究の過程で、他の脊椎動物とは異なり、本種では心臓(systemic heart)が下垂体前葉/後葉ホルモンの重要な標的器官であることが示唆された。そこで本年度はヌタウナギの心房と心室(atrium and ventricle of the systemic heart)についてmRNA-Seqを行い、発現する機能分子を網羅的に同定した。今後は心臓で下垂体ホルモン受容体と共局在する分子を特定することにより、本種における下垂体前葉/後葉ホルモンの機能を解明し、これらホルモンの機能進化について検証する予定である。 また、下垂体後葉ホルモン受容体ファミリーの分子進化を明らかにすべく、本種を含む魚類を中心とした網羅的かつ詳細なシンテニー解析を実施した。これにより、現在の下垂体後葉ホルモン受容体ファミリーが形成される過程で、1)複数の異なるスケールでの遺伝情報の重複、ならびに2)祖先型顎口類における染色体再編、が影響したことが示された。さらに、後葉ホルモン受容体サブタイプそれぞれに特異的な遺伝子シンテニーパターンは、円口類の分岐後に成立した可能性が示唆された。 こうした成果に基づき、本年度は国内外の学会で4件の発表を行った。このうち1件は国際学会(6th Biennial Meeting of North American Society for Comparative Endocrinology)での招待講演である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
各種機能分子の共局在解析(「今後の研究の推進方策」を参照)は本年度から取り掛かる予定であったが、未だ実行できていない。心臓のmRNA-Seq解析や遺伝子シンテニー解析など、予定外の解析を優先したことが一因である。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響および研究代表者の体調不良により研究が停滞した。本研究は当初、2021年度を最終年度とする3カ年で計画していたが、進捗状況を鑑みて補助事業期間の延長を申請した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに同定した各種機能分子の共局在解析ならびに成果発表を行う。 (1)脳、腎臓および心臓などの器官において、下垂体ホルモン受容体とその他機能分子群の共局在を解析する。解析対象の分子は先行研究の知見ならびに本研究におけるqPCRやmRNA-Seq解析結果から選定する。手法としては蛍光多重in situ hybridizationを予定している。 (2)これまでの結果ならびに上記1で得られた結果から、特に重要と考えられる分子については特異的抗体を作製し、上記1と並行して細胞内局在解析を進める。ただし、市販の抗体でエピトープ配列が標的分子と一致するものがあれば、優先的に使用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、参加した国内外の学会がすべてオンライン開催となったため旅費が発生しなかった。一方で前年度から引き続き学内業務負担が増加し、研究エフォートが圧迫された。また、2021年度後半は研究代表者の体調不良により研究および論文執筆が停滞した。本研究は当初、2021年度を最終年度とする3カ年で計画していたが、進捗状況を鑑みて補助事業期間の延長を申請した。次年度使用額は、蛍光多重ISHや免疫組織化学的手法に関連する試薬類の購入および成果発表費用に充てることを予定している。
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