脊椎動物は進化の過程で、体内の水とイオンのバランスを保つ能力(体液調節能力)を獲得し、様々な環境に進出してきた。しかし、この能力がどのような過程を経て獲得されたのかはわかっていない。本研究では、現生脊椎動物で唯一「体液調節をしない」生物であるヌタウナギに着目し、我々「調節型」の生物と何が違うのか、分子レベルで検証した。その結果、ヌタウナギの体液調節関連遺伝子レパートリーは他の脊椎動物と大差ないが、特に塩分の輸送に関する遺伝子がOFFになっていることを見出した。つまり、問題は遺伝子のレパートリーではなくその発現調節様式であり、ヌタウナギは二次的に体液調節能力を失ったことが示唆された。
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