研究課題/領域番号 |
19K16182
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研究機関 | 公益財団法人サントリー生命科学財団 |
研究代表者 |
松原 伸 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所・統合生体分子機能研究部, 研究員 (70710747)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 卵巣 / 卵胞成長 / ペプチドホルモン / 受容体 / カタユウレイボヤ |
研究実績の概要 |
本研究では、卵巣という器官による内分泌制御機構の進化的な起源を明らかにするため、脊椎動物の原型を有していると考えられるカタユウレイボヤを用いて、新規卵巣由来のペプチドホルモンとその受容体を同定し、卵胞成長における機能を明らかにする事を目的としている。 2020年度は計画に従い、2019年度にホヤ卵巣から検出した新規卵巣ペプチドホルモンについて、PD-incorporated SVM法を用いて受容体の候補遺伝子を予測し、候補遺伝子のクローニングを行った。哺乳類の培養細胞において受容体候補遺伝子の発現を試みたが、多くは適切な発現を示さなかった。そこで、昆虫細胞における実験系に切り替えたところ、細胞膜への局在を確認する事ができた。この実験系を用いて新規卵巣ペプチドのホルモンとの反応性を調べたが、ほとんどが特異的な反応を示さなかった。したがって、2021年度はこの情報をPD-incorporated SVMに再学習させ、再度受容体候補遺伝子の予測を行う。 また、2021年度に開始予定であった、新規卵巣ペプチドホルモンの機能解析を前倒して開始した。リガンドの遺伝子が高発現する成長段階のホヤ卵胞を単離し、ペプチドホルモン処理後に卵胞を回収した。ペプチドホルモン未処理群に対する遺伝子発現変動を解析することで、ペプチドホルモンによって制御される下流遺伝子を同定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規卵巣ペプチドホルモンの受容体遺伝子の同定においては、PD-incorporated SVMで得られた受容体の候補遺伝子が哺乳類の培養細胞で適切に発現しなかった事が原因で計画からやや遅れている。一方で、新規卵巣ペプチドの機能解析においては計画を前倒しし、単離した各成長段階の卵胞に処理することで、新規卵巣ペプチドに制御される標的遺伝子を同定するための実験を開始したため、(2)の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、2020年度に検証した新規卵巣ペプチドと受容体候補遺伝子の相互作用情報をPD-incorporated SVMに再学習させ、予測器の精度を上げて受容体の候補遺伝子を再予測する。得られた受容体候補遺伝子の発現ベクターを構築し、昆虫細胞の発現系を用いて新規卵巣ペプチドとの相互作用を検証する。受容体遺伝子が同定できれば、卵巣ペプチドの受容体遺伝子の両方について、in situ hybridizationや免疫染色等によってホヤ卵巣内における局在解析を行う。また、卵巣ペプチドで処理した卵胞を用いてRNA-seq解析を行い、卵巣ペプチドに制御される下流の遺伝子を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による出勤制限および出張制限の影響で、国内出張費として計上していた予算と消耗品費として計上していた予算の一部の合計約30万円分を使用しなかった。繰り越し分は2020年度に計画を前倒して開始したRNA-seqの委託解析費に充てる。以前はRNA-seq解析はn=1, 2でスクリーニング実験として行う事が一般的であったが、近年、投稿先の学術雑誌によってはn=3以上の解析を求められる事が増えてきた。したがって、繰り越し分の予算でRNA-seq解析のnを増やし、より精度と再現性の高い解析を行う事で確実に新規卵巣ペプチドによって制御される下流遺伝子を同定する。
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