本研究では、卵巣という器官による内分泌制御機構の進化的な起源を明らかにするため、脊椎動物の原型を有していると考えられるカタユウレイボヤを用いて、新規卵巣由来のペプチドホルモンとその受容体を同定し、卵胞成長における機能を明らかにする事を目的としている。 2021年度は計画に従い、2020年度までにホヤ卵巣から検出した新規卵巣ペプチドホルモンについて、PD-incorporated SVM法で得られた受容体の候補遺伝子との相互作用を検証した。内在の受容体遺伝子を持たないSf9細胞にバキュロウイルスで遺伝子を導入し、受容体候補遺伝子を発現させて多検体自動蛍光測定装置FlexStationを用いてリガンドとの相互作用を検証した。また、かん流装置と共焦点レーザー顕微鏡を用いてリガンド処理による細胞内カルシウムイオンの放出をタイムラプスで観察し、いくつかの受容体候補遺伝子が相互作用する可能性があることがわかった。 受容体遺伝子の同定が難航した事を受け、計画を一部変更して、ホヤの各組織を用いたRNA-seq解析を行い、qRT-PCRで組織特異的な発現を示す遺伝子を同定した。これにより、受容体遺伝子の同定と同時に組織発現分布の情報を参照する事ができるようになった。 新規卵巣ペプチドホルモンの機能解析については、リガンドの遺伝子が高発現する成長段階のホヤ卵胞を単離し、ペプチドホルモン処理後に卵胞を回収してRNA-seq解析を行った。発現変動が見られた遺伝子の多くは機能未知の遺伝子だったが、一部は既知の成長因子関連遺伝子等が含まれていたため、これらの結果を精査することで卵胞成長における卵巣ぺプチドの機能を追求する。
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