研究課題/領域番号 |
19K16191
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
冨菜 雄介 北海道大学, 電子科学研究所, 特任助教 (70835959)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膜電位イメージング / コネクトーム / 神経回路 / 画像解析 / 電気生理学 / 機械感覚 / 膜電位感受性色素 |
研究実績の概要 |
本研究では「ニューロン集団活動のダイナミクスの学習行動への関与」という視点から、網羅的記録・細胞同定に有利なヒルを実験系として、局所湾曲反射の鋭 敏化学習に的を絞り、その神経回路網ダイナミクスの発現機構を神経生理学的に解明することを目的とする。2年目は初年度までに得たデータの解析を深めることに集中した。初年度では鋭敏化刺激である侵害感覚刺激により学習に影響を与えるモノアミン含有ニューロン(Retzius細胞、 Lyedig細胞)が賦活されることを明らかにした。その他、複数の介在ニューロンおよび運動ニューロンが動員されることが明らかとなり、これらニューロン群とモノアミン含有ニューロン群とのコヒーレンス解析を遂行した。そこで顕著な結果を得たので、これを論文として投稿準備中である。また、本研究に特に関与の深い研究として、網羅的膜電位イメージング技術と 連続ブロック表面透過型電子顕微鏡撮像を組み合わせた生理-解剖学的コネクトーム解析を行った。異なる行動において一つの運動ニューロンにシナプス接続するニューロン群について解析を行った。その結果、同期的に活動するプレシナプスニューロン群がこの運動ニューロンの神経突起上に行動に応じて異なるクラスターを形成することを発見した。これは論文としてまとめ、海外学術オープンアクセスジャーナルeLifeに掲載された。この結果については2020年の日本動物学会、2021年の日本動物学会北海道支部大会において発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していたカリフォルニア工科大学での追加実験(研究代表者が2017年に構築した顕微鏡装置を利用したイメージング実験)が渡航制限により不可能となり、今年度はデータ解析を中心に研究を進めた。2021年1月より、北海道大学電子科学研究所ニコンイメージングセンターに特任助教として異動し、そこで新たに光学装置を組み上げて本プロジェクトに生かす算段が整った。その中で、本プロジェクトに深く関連する機能的コネクトーム研究を、生命科学業界では国際的に認知度の高いeLife誌に掲載するに至ったこともあり、本プロジェクトの進展は目覚ましいものがあると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
北海道大学電子科学研究所ニコンイメージングセンターで開発中の高速3次元蛍光イメージング技術を利用して、モノアミン含有ニューロン群が活動した際にどのニューロン群が活動を変化させるのか、網羅的にマッピングを行う。また、その結果を機能的コネクトームデータと照らし合わせることで解剖学的な知見を付与することで、神経生物学的に統合的な観点から集団神経活動が学習に与える寄与について論じ、論文として取りまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学の異動に伴って新たに実験装置を組み直す必要が生じたため。使用計画としては、顕微鏡装置に電気生理学装置を組み合わせるための材料費および製作工賃(電子科学研究所の工作室に依頼)に主に充当する予定である。 また本装置の性能評価のための試薬消耗品への充当を計画する。
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