本研究では「ニューロン集団活動のダイナミクスの学習行動への関与」という視点から、網羅的記録・細胞同定に有利なヒルを実験系として、局所湾曲反射の鋭 敏化学習に的を絞り、その神経回路網ダイナミクスの発現機構を神経生理学的に解明することを目的とする。2019年度から2020年度では、鋭敏化刺激である侵害感覚刺激により学習に影響を与えるモノアミン含有ニューロン(Retzius細胞、 Lyedig細胞)、および複数の介在ニューロンと運動ニューロンが賦活されることを明らかにした。最終年度では、研究室異動に伴い、神経生理実験装置の再構築を行うとともに、複数ニューロンの高速3D撮像を可能とする条件検討を行った。また2020年度までの未解析データに関して、画像解析(コヒーレンス解析など)を遂行した。その画像解析の過程で、イメージング時に生じたモーションアーティファクトを補正する方法を再検討し、画像処理のクオリティを向上させる結果を得たので、これも含めて論文として投稿準備中である。また、本研究に特に関与の深い研究として、網羅的膜電位イメージング技術と連続ブロック表面透過型電子顕微鏡撮像を組み合わせた生理-解剖学的コネクトーム解析を行なったが、2021年2月に海外学術オープンアクセスジャーナルeLifeに掲載されている。こちらの結果については2021年の日本動物学会のサテライトシンポジウム、日本動物学会比較生理生化学大会の吉田奨励賞受賞者講演において発表を行った。
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