研究課題/領域番号 |
19K16193
|
研究機関 | 福島工業高等専門学校 |
研究代表者 |
十亀 陽一郎 福島工業高等専門学校, 化学・バイオ工学科, 助教 (60769850)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | シスト / 無代謝休眠 / 細胞修復 / 環境ストレス |
研究実績の概要 |
繊毛虫Colpoda cucullus (コルポーダ) に代表される一部の単細胞生物は、劣悪な環境ストレスに対する適応戦略として、休眠シストを形成する。休眠シスト形成は、細胞構造の休眠型への再構築と代謝停止を伴うリバーシブルな細胞分化のプロセスである。これまで、休眠シストでは、シスト壁などの特殊な細胞構造(シェルター機構)により様々な環境ストレスに対する耐性を獲得すると考えられてきた。我々は、栄養細胞と休眠シストにガンマ線を照射し、バイオアッセイを行うことにより、コルポーダが休眠シストを形成することで放射線(ガンマ線)に対して強い耐性を獲得することを明らかにした。栄養細胞にガンマ線を照射すると、細胞は全滅した。一方、休眠シストに照射した場合、照射後脱シストさせることにより、ほぼ全ての細胞が栄養細胞に復帰した(ほぼ全ての細胞が生存していた)。さらに、詳細に解析を行った結果、休眠シストにおいて、無代謝休眠の状態であるにもかかわらず、休眠シストが細胞の障害を修復していることを明らかにした。ガンマ線は、細胞を構成する生体分子を直接的に破壊する。さらに、活性酸素種の生成を介した酸化ストレスによる間接的な傷害も細胞に生じる。特にDNAやタンパク質の酸化が主な細胞傷害として考えられている。生物は、酸化ストレスから細胞を守るために様々な防御機構を発展させているが、休眠シストでもそれらと同じような機構が働いていることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度では、バイオアッセイ法や生理学的手法による実験において、休眠シストの細胞ストレス修復機の大まかな概要を把握することに成功した。研究成果も徐々にでつつあり、概ね順調に進展していると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題2-3年目では、休眠シストにおける細胞修復機構の分子機構を明らかにするため、生化学的手法や分子生物学的手法を用いた実験に着手していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
多少の残額はあるが、研究費は計画的に使用している。残額は次年度に繰り越し、使用する。
|