研究課題/領域番号 |
19K16199
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
谷口 順子 筑波大学, 生命環境系, 特別研究員(PD) (60743127)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 前端部神経外胚葉 / 腸管神経 |
研究実績の概要 |
バフンウニの幼生は、受精後4日目になると餌の摂取を開始し、この時期の幼生の外胚葉神経では数種類の神経伝達物質の存在が報告されている。本年度はそれらの神経伝達物質(特にウニ幼生の脳相同領域と呼ばれる前端部神経外胚葉に存在する神経伝達物質)が、腸管機能にどのような影響を持っているのか解析を進めてきた。ウニの腸管には、幽門周辺にいくつかの神経様細胞の存在が確認されており、その中でも特に幽門近郊の胃側に存在する腸管神経細胞の機能と、外胚葉からの神経伝達物質との関連性に着目してきた。初期ウニ幼生の幽門胃側の神経細胞は1細胞しか存在せず、幽門を囲むようにアクソンを伸長する特徴的な形態を持っており、腸管胃側神経細胞が一酸化窒素を通して幽門の開口に関与している可能性がこれまでに示されている。その一方で、外胚葉からの神経伝達もまた幽門の開口に関与していることも示唆されており、外胚葉からの神経伝達物質がどのような経路で腸管胃側神経細胞を刺激し、幽門の開口に繋がっているのか、各種神経伝達物質や神経伝達物質受容体の検出、またそれらの阻害実験を通して全体像を把握する解析を進めている。 後口動物の進化の過程で、脳が腸管機能を制御し、両者が密接な関連を持ち始めた時期についてはまだ未解明な点が多い。脳相同領域であるウニ前端部神経外胚葉が腸管機能に影響を及ぼす経路を明らかにすることで、脳が腸管の機能をコントロールするようになった起源を解明することにつながると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の解析を通して、前端部神経外胚葉の神経細胞が胃側腸管神経細胞を通して幽門の機能に影響を及ぼす一連の流れが、ほぼ解明された。これらの成果をまとめて論文投稿の準備を進めている段階であり、進捗状況はおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
1年目において研究課題が順調に進行していることから、2年目もこれまでの研究計画に沿った研究を進めていく。これまでは神経伝達物質それぞれについて、個別にその一連の伝達経路の解明を進めてきたが、実際には様々な神経伝達物質が複雑に関与しながら腸管機能を制御することが示唆されている。今後はそれらがお互いにどのように関与しあっているのかに着目しながら研究を遂行していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究室で保持している抗体やmRNAプローブ等を用いた解析が多く、使用計画よりも消耗品等の購入が少ない中で、研究を順調に進めることができた。次年度は比較的高額な消耗品となるモルフォリノアンチセンスオリゴを様々な遺伝子の配列で購入することを計画しており、今後の計画をより順調に進行するためにも、本年度使用額を次年度に使用する計画となった。
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