研究課題/領域番号 |
19K16199
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
谷口 順子 筑波大学, 生命環境系, 研究員 (60743127)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 幽門 / セロトニン / Go-Opsin |
研究実績の概要 |
本年度は、本研究中で解明を目指していた“外胚葉神経と幽門(胃と腸の間の門)の開口の関係性”を明確に示すことに成功し、論文として報告した。 幽門は前端部神経外胚葉とは離れた位置に存在することから、これまで着目されてこなかったが、本研究では前端部神経外胚葉に存在するセロトニン神経が幽門の開口を誘導していることを初めて明らかにした。さらにセロトニンの放出のきっかけに光刺激が関与していることや、そこに関わる光受容体はGo-Opsinであることを突き止めた。つまりウニは光刺激を受けてセロトニンが放出されることで、幽門が開口し、結果的に胃の中のものが腸へと移動していくメカニズムを持っていることが明らかになった。 また、様々なセロトニン受容体阻害剤およびセロトニン受容体抑制胚の解析から、5HT2セロトニン受容体が幽門の開口に関与していることが示唆された。さらに、過去に行った研究で幽門の胃側に存在するnNOSを含む神経細胞からの一酸化窒素の放出が幽門の開口に関わっていることが示されているが、その一酸化窒素放出の上流でセロトニンが働くことも実験により証明することができた。 つまり、光刺激-Go-Opsin受容体-セロトニン神経の活性-5HT2受容体によるセロトニン受容-一酸化窒素放出-幽門開口という一連の流れを明確に示すことができた。これらの結果は、光刺激が最終的に幽門の開口に機能するという、生物界における新たな発見にも繋がった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の1番の目的であった、前端部神経外胚葉と幽門の開口の関係を明らかにし、論文としてまとめ報告したことから、順調に研究成果をあげることができたと評価する。現在さらに発展的な研究課題へと取り組むこともできており、期待以上の成果も得られている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はセロトニン以外の神経伝達物質にも着目し、それぞれの神経伝達物質とその機能の関係性をより明らかにしていく予定である。免疫染色やin situ hybridizatioを通して神経伝達物質合成酵素の存在や、神経伝達物質受容体のウニ幼生における存在位置を明らかにし、その神経伝達物質の添加や阻害を通して、腸管の機能に与える影響を明確にしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が順調に進行したことから、予備的に計画していた研究を進める必要がなく、消耗品等の購入が予定より少なくなった。また学会等が開催されなかったため、旅費等も使用することがなかった。これまでの研究成果から、光刺激がウニの胃腸の機能に関与していることが明らかとなっているため、すでに予定している次年度の使用計画の消耗品等に加えて、光照射に関わる備品等の購入を計画している。
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