研究課題
昨年度は、光刺激をきっかけとしてウニ前端部神経外胚葉(脳相同領域)のセロトニンが、離れた組織である胃と腸の間にある幽門の開口を誘導することを明らかにしてきた。本年度はそれらの結果を踏まえ、セロトニン以外の神経伝達物質が腸管機能に及ぼす影響にも着目し、研究を進めてきた。その結果、光刺激はセロトニンの放出に関与するだけでなく、アセチルコリン抑制にも関与しており、そのアセチルコリンの抑制は幽門の開口を阻害することが示された。セロトニンの添加実験では幽門は100%近く開口するのに対し、通常の光刺激では幽門開口率は40%程度に留まる。本研究により、光の刺激で生じる幽門の開口にはセロトニン神経経路による開口の誘導と、アセチルコリン神経経路による開口の抑制の二つの異なる経路の存在が関与し、そのバランスによって開閉がコントロールされていることが示唆された。このことは、後口動物の初期の共通祖先ですでに、脳の関与も含めた複雑な神経経路が、口から肛門までのひと続きの腸管の機能を制御していたと考えられる一つの証拠になった。また、セロトニン神経の経路には前端部神経外胚葉近隣の光受容体Go-opsin、アセチルコリン神経の経路にはプルテウス幼生の各腕の先端の光受容体opsin2がそれぞれ関与していることが明らかになり、光という外的要因をきっかけとして腸管機能が制御されていることが示唆され、今後のさらなる研究の発展に繋がった。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
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