当初の目的であったコオイムシ種内の種分化現象に関する追究は研究計画の初年度までに成果が得られており、コオイムシの日本列島集団と大陸集団の間で種分化の移行段階を示す極めて興味深い現象を解明することができた。また、この種分化現象の要因が近縁種のオオコオイムシとの繁殖干渉である可能性を示唆することができた。さらに、研究計画の二年度目はGRAS-Di法を用いたゲノムワイドなSNPs解析を実施したことにより、コオイムシが日本列島から大陸へ逆分散したことを明確に示すことができた。これらの成果によって、コオイムシの進化史および現在生じている種分化現象を網羅的に究明することができた。この成果については、現在、国際誌へ投稿して査読中であり、間もなく公表できるものと考えている。 また、上記の研究を進める中で開発したSSRマーカー (20座) については、すでに国際誌 Genes & Genetic Systems (GGS) 上で公開されている。この論文はGGSの表紙にも採用されており、大きなインパクトが得られたものと考えている。さらに、開発したSSRマーカーを用いることで個体識別や親子判定も可能であることが確認できたことから、計画二年度目は自身で開発したSSRマーカーを用いて、父親が単独で仔の世話をするコオイムシ類の特殊な繁殖戦略についての追究も始動させた。これまでに、父親が背負う卵塊の35%ほどが他オスの精子によって受精した卵であることや、卵塊形成には複数のメスが関与してることなどを明らかにしており、学会発表などでも高い評価を受けている。繁殖生態に関する成果については、現在、追実験などを実施して論文化に向けた準備を整えている。
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