研究実績の概要 |
本研究は、ゲノムと形態に基づき、ニホンザルの東西分化構造と局所適応を明らかにすることを目的とする。本年度は、ニホンザルの系統地理に関する論文の投稿、形態データの収集および解析手法の開発、全ゲノムリシーケンスを行った。系統地理論文については、前年度までにおおよその解析は終了していたが、査読者の改訂依頼を受けて、以下の解析の改良を行った。ニホンザルの過去分布を推定する際の生態ニッチモデリングにおいて、あらかじめ冗長な予測変数を除外することで、オーバーフィッティングの危険性を低減させた。氷期の最盛期において、ニホンザルは日本列島の南岸の限られた地域(レフュジア)に分布を後退させていた可能性が高いことが示された。対立遺伝子頻度スペクトラムに基づく集団史の推定を行った結果、ニホンザルの東西クレードの集団間に遺伝子流動があった可能性が高いことが示された。この成果は、Journal of Biogeographyに掲載された(Ito et al. 2021)。形態データの収集では、約150個体のニホンザルの頭蓋と下顎のCT撮影を行い、データベース(Digital Morphology Museum, KUPRI)への登録を進めた。また、CT画像データから自動的にサーフェス(メッシュ)データを生成するスクリプトを作成した。屋久島集団を中心に4集団12個体のサンプルについて全ゲノムリシーケンスを行い、クオリティコントロールや参照配列へのマッピング等のバイオインフォマティクス解析を進めた。
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