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2019 年度 実施状況報告書

アジア産トビカズラ属3種の送粉様式の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K16215
研究機関琉球大学

研究代表者

小林 峻  琉球大学, 理工学研究科, 博士研究員 (60838150)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2021-03-31
キーワードトビカズラ属 / 送粉生態 / 哺乳類 / アジア
研究実績の概要

本研究では、これまで見過ごされてきた、送粉者としての非飛翔性哺乳類のアジア域における重要性を明らかにし、非飛翔性哺乳類媒植物の進化プロセスを推定することを目的としている。本研究で対象とするのは、マメ科トビカズラ属で、その中でも、アジアに分布する種のみで構成されているサブクレードに属するMucuna macrocarpa、M. birdwoodiana、M. thailandicaの3種である。
九州(M. macrocarpa)、沖縄島(M. macrocarpa)、タイ(M. macrocarpa、M. thailandica)、香港(M. birdwoodiana)において、誘引形質一つと考えられる花の匂い(揮発成分)の捕集、および、花の構造による送粉者の限定メカニズムに関する調査を実施した。また、タイ北部においてM. macrocarpaおよびM. thailandicaの送粉様式に関する野外調査を開始した。しかし、タイにおける野外調査は、新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的な流行の影響により、2020年2月以降は中断している。
研究成果としては、M. birdwoodianaの主要な送粉者がハクビシンであり、外来亜種のクリハラリスも送粉に貢献しているという、本種の送粉様式に関する研究の成果を学術論文として公表した。本種はコウモリ媒とされていた種であるが、実際には非飛翔性哺乳類媒であることが明らかとなった。この結果から、本サブクレードが、非飛翔性哺乳類に依存した送粉を行っている種で構成されている可能性が高くなった。国際会議では、この結果に基づく、本サブクレードの進化に関する講演を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2019年度は、当初の計画通り九州、沖縄島、タイ、香港において、花の匂い成分(揮発成分)の捕集と、裂開するために必要な力の強さの計測を行った。また、タイ北部においてMucuna macrocarpaの花蜜の捕集を行った。九州と香港では、現地の研究者との調整が計画よりもスムーズに進んだこと、複数種の花期が重複していたことから、当初の計画よりも1種ずつ多くの種(九州では本研究で対象とするサブクレードに属するM. sempervirens、香港では本研究の対象サブクレードとは別のサブクレードに属するM. championii)について、揮発成分の捕集と裂開に必要な力の強さの計測を実施することができた。
一方、当初の計画通り、タイ北部においてM. thailandicaおよびM. macrocarpaの送粉様式の解明のための野外調査を1月に開始したが、新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の影響で、調査開始直後に中断した。そのため、実施予定であった野外調査に遅れが生じた。
野外調査の延期に伴い、次年度購入予定であった調査機材を一部前倒して購入し、沖縄島において試行を始めた。
研究成果はほぼ計画通りに公表できており、M. birdwoodianaの送粉様式を報告した学術論文1編を出版した。また、トビカズラ属の進化に関する講演を国際会議の招待講演者として発表した他、トビカズラ属の送粉様式に関する講演を計3件行った。

今後の研究の推進方策

調査中にCOVID-19の問題が発生したため、現在、送粉様式解明のための調査機材をタイの調査地に設置したままの状態である。そのため、COVID-19の流行が日本およびタイで終息した後、調査機材を回収しなければならない。
野外調査は、COVID-19の流行が終息した場合、2020年度中に改めてタイ北部におけるM. macrocarpaとM. thailandicaの送粉様式に関する調査を開始する予定である。しかし、2019-2020年シーズンの調査開始後にCOVID-19が流行したため、2019年度に予定していた旅費を使用し始めており、2020年度に旅費を繰り越すことができていない。そのため2020年度の調査旅費が不足する懸念がある。次の花期までにCOVID-19の流行が終息しなかった場合は、年度内の野外調査は実施しない。
2019年度に捕集した揮発成分の分析や花の裂開に必要な力の強さの解析については、2020年度に実施する。その他、2019年度に得られたデータについては解析を終わらせる。
研究成果については、2019-2020年シーズンにタイ北部における調査結果を得られなかったことから、当初の計画通りに、本年度中にタイ北部におけるM. macrocarpaとM. thailandicaの送粉様式を明らかにし、成果を公表するのは難しい。また、それに伴い、年度内に本サブクレードの進化プロセスを解明することも困難な可能性が高い。一方で、当初は計画していなかった同属別種のM. championiiの送粉様式の調査を香港で行うことができたことから、本種についての研究成果を学術論文として公表予定である。学会への参加についても、既に参加予定であった学会が中止になるなど、開催されるかが不透明な状況であるが、開催される関連学会があり参加可能な状況であれば、成果を発表する予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2019 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)

  • [国際共同研究] Chulalongkorn University/Chiang Mai University/Sakaerat Environmental Research Station(タイ)

    • 国名
      タイ
    • 外国機関名
      Chulalongkorn University/Chiang Mai University/Sakaerat Environmental Research Station
  • [国際共同研究] Kadoorie Farm and Botanic Garden(その他の国・地域)

    • 国名
      その他の国・地域
    • 外国機関名
      Kadoorie Farm and Botanic Garden
  • [国際共同研究] Chinese Culture University/Endemic Species Research Institute(その他の国・地域)

    • 国名
      その他の国・地域
    • 外国機関名
      Chinese Culture University/Endemic Species Research Institute
  • [雑誌論文] Civet pollination in Mucuna birdwoodiana (Fabaceae: Papilionoideae)2019

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi S., Gale S. W., Denda T., Izawa M.
    • 雑誌名

      Plant Ecology

      巻: 220 ページ: 457-466

    • DOI

      https://doi.org/10.1007/s11258-019-00927-y

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Mammal-dependent pollination system of Mucuna (Fabaceae) in Asia2019

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi Shun
    • 学会等名
      2019 Workshop on Biodiversity of Taiwan-Ryukyu Archipelago
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Evolution of non-flying mammal dependent pollination system in Asian Mucuna2019

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi Shun
    • 学会等名
      International Conference on Biodiversity 2019 (IBD 2019)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] アジアにおける非飛翔性哺乳類媒研究2019

    • 著者名/発表者名
      小林峻
    • 学会等名
      日本哺乳類学会2019年度大会
  • [学会発表] Mammalian pollinators of Mucuna spp. in Asia2019

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi Shun
    • 学会等名
      Symposium of Integrative Biology: World Tour
    • 国際学会

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公開日: 2021-01-27  

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