研究課題/領域番号 |
19K16216
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
山崎 健史 首都大学東京, 理学研究科, 特任助教 (90746786)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 食物網 / 安定同位体 / ハエトリグモ |
研究実績の概要 |
クモ類は、これまで肉食性の捕食者と考えられてきたが、近年、植物由来の栄養源を利用している観察例が蓄積され、安定同位体分析により植物食者と同じ栄養段階に位置する種もいることが分かってきた。これまで考えられていた以上にクモ類の食性が多様であることが分かる。節足動物では、昆虫が非常に多様化しているが、口器の多様化に伴う食性の多様化が一因と考えられている。クモ類でも、”食いわけ”のような状況が、多様化を促進した可能性がある。本研究では、クモ類でもっとも多様なグループであるハエトリグモ科を対象に、炭素・窒素の安定同位体比分析を行い、ハエトリグモ科の多様性に、食性の多様性がどのように影響するのかを明らかにすることを目的にしている。 今年度は、首都大学東京南大沢キャンパス(東京都、日本)とランビルヒルズ国立公園(サラワク州、マレーシア)で、サンプリングを行い、ハエトリグモ各種の栄養段階を調べた。また、ハエトリグモ科との比較のため、中国・四国地方の数カ所でサンプリングも行った。今年度中には、国内のサンプルのみ安定同位体比分析が完了した。南大沢キャンパスでは、未同定を含め、5種のハエトリグモ(アリ擬態2種;アリ食1種を含む)、4種のワシグモ科・ササグモ科(肉食性)の栄養段階を調べてた。結果は、アリ擬態種のMyrmarachne japonica(n=2)は、同所的に採集されたアリより、低い窒素の値を示し、一方、同じアリ擬態のMyrmarachne melanocephala (n=2)は、同所的に採集されたアリより、高いか同じ程度の値を示した。アリ食のSiler cupreus (n=2)は、同所的に採集されたアリ類より、高い窒素の値を示し、炭素の値もアリ類に近い値を示した。いずれのデータも分析した個体数が少ないため、今後、個体数を増やし、より一般的な傾向を見る必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内、国外ともに採集調査は問題なくできた。分析は、マレーシアでのサンプルの解析待ちではあるが、概ね順調に進んでいると言える。しかし、新型コロナウイルスの影響で、2020年度以降の野外調査(国内・国外ともに)が、スムーズに実施できない可能性もあり、その場合の対策も考えなければならない。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの影響で、おそらく2020年度以降は、想定していた調査地での調査ができない可能性がある。また、申請者の所属が変わったため、国内の調査地もよりアクセスしやすい場所に変更する必要もある。研究手法については、問題ないが、国内・国外の移動が制限させている状況で、いかに目的のサンプリングを行うか考える必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は、計画通りの支出を行なったが、各品目で、予定より数百円の差額で出てしまい、891円のあまりが生じた。また、残金を0円にするための不必要な物品購入も行わなかった。来年度以降も、おそらく多少の差額が生じると想定されるが、予定通り研究費を使用し、できるだけ差額が1000円以下になるように努めたい。
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