研究課題/領域番号 |
19K16217
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
武藤 望生 東海大学, 生物学部, 准教授 (50724267)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生殖隔離 / 生活史 / 生態 / ゲノム / メバル属 |
研究実績の概要 |
本年度は,新型コロナウィルスの感染状況が依然として改善しないことをふまえ,現地訪問によらず標本を収集することにつとめた.おおむねその手段を確立し,本州中部日本海沿岸,本州北部太平洋沿岸,および北海道日本海沿岸の3地域からそれぞれ30-50個体程度の標本を得ることができた.これらの標本の体長,体重,生殖腺重量を計測し,組織切片と耳石を採取して,魚体の写真を撮影した.以上をもちいて,遺伝解析および生活史の解析を予備的に実施した.その結果にもとづき,キツネメバル種群の年齢と成長の関係および繁殖周期を地域ごとにおおまかに推定した.ここでキツネメバル種群とは,キツネメバルとタヌキメバルを区別せずまとめたグループのことをさす(遺伝解析のデータ処理が未実施であるため,各標本の遺伝的帰属確率にもとづく種判別ができておらず,キツネメバルとタヌキメバルが混在した標本群を解析に用いたため). 上記と並行して,キツネメバル種群の近縁グループであるシマゾイとクロソイの間の生殖隔離機構を比較用に分析した.人工交配家系における分離比の歪みの解析により,遺伝的不和合(Dobzhansky-Muller incompatibility),種ごとの局所環境適応にもとづく雑種の生存率低下,母体-配偶子間の不和合といった複数の要因が,当該のグループにおいて生殖隔離をひきおこしていることが示唆された.この結果を2021年度日本魚類学会年会において発表するとともに,投稿論文の原稿を執筆した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染拡大の影響により標本採集が予定通り実施できず,研究計画がすべて後ろ倒しで進行している.最終年度(22年度)には補助期間延長申請をおこなう予定である.一方,キツネメバル種群の近縁グループを対象とした解析は,当初はキツネメバル種群との比較用を目的としていたが,予期せず単独で重要な結果が得られたことから,学会発表と論文執筆に伸展した.異常を総合して「やや遅れている」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
標本採集を継続して不足分をおぎなう.また,耳石を用いた解析のデータ取得および遺伝データ解析をすすめて,種ごとに生活史データを整理する.キツネメバル種群近縁グループの分析結果を論文として投稿する.当初の期間内に研究計画を遂行できない可能性がきわめて高いため,補助期間延長申請を予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大の影響により標本採集が予定通り実施できていなかったことから,標本に対する分析の費用として計上していた金額が使用できず,次年度使用額が生じた.標本採集の遅れはとりもどしつつあるため,今後分析を実施していく.
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