研究課題/領域番号 |
19K16219
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
山本 将也 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 助教 (80826834)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 種分化 / 都市化 / 遺伝構造 / ムラサキサギゴケ / カワセミソウ |
研究実績の概要 |
植物が都市環境に急速に適応し、形質進化が起こっていることは、今や明白な事実として認識されつつある。しかしながら、そのような強い選択圧を生み出す都市化が、植物の種分化を駆動するかどうかは検証されていない。本研究では、都市部で同所的に生育し、花形質が著しく分化したサギゴケ科植物2種を材料とし、ゲノム網羅的な遺伝子解析と送粉生態学的手法を用いることで、種分化過程における都市化の相対的な貢献度を解明することを目指すものである。 京都御苑のみに生育するカワセミソウとその姉妹種であるサギゴケの種分化機構を明らかにするために、今年度はMig-seq法によるゲノム集約解析を実施した。サギゴケは全国から80集団を採集し、カワセミソウも含めて、約400個体で集団遺伝解析を行うことができた。500snp程度のゲノム変異を得ることができ、カワセミソウとサギゴケの間で明瞭な遺伝的分化が検出された。また、サギゴケ種内の遺伝構造から、カワセミソウが近畿地方のサギゴケ集団から派生したことが明らかになった。同所的に生育する種間で遺伝子流動がほとんど検出されなかったことから、ポリネーターなどの生態的要因で生殖隔離機構が存在することが示唆された。近似ベイズ計算に基づく集団動態モデリングからは、カワセミソウとサギゴケの種分化が極めて最近(300年以内)におきたと推定された。 最終年度では、種境界の維持機構や種分化をもたらした生態的あるいは環境的要因を明らかにすることが課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの研究遅延を取り戻すことができ、カワセミソウとサギゴケの間に遺伝的な分化が存在することを明らかにするなど、当初想定していた以上の結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、生殖隔離が維持されている背景を明らかにするために、(1)2訪花昆虫相、(2)繁殖様式、(3)結実などの繁殖状況について調査する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
緊急事態宣言により、出張が制限されていたため、今年度に出張を行うことで計画的に使用できる。
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