研究課題/領域番号 |
19K16229
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
辻 かおる 京都大学, 生態学研究センター, 研究員 (40645280)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 雌雄差 / 花 / 微生物 / 送粉 |
研究実績の概要 |
ヒサカキ(Eurya japonica)の花に棲む微生物が、雌花より雄花から多く検出されることは、これまでに行った研究から明らかになっていたが、先行研究同様、本年の研究でも微生物は雄花からより多く観察された。これらの観察をもとに、この花に棲む微生物が、花に訪れる昆虫たちや、ひいてはヒサカキの繁殖にどのような波及効果をもたらすのかを解明するため、ヒサカキの花に、ヒサカキの花から単離されたMetschnikowia 属の酵母とAcinetobacter属のバクテリアを実験的に再導入し、送粉者の行動や花蜜の成分、果実や種子が作られる割合(結果率や結実率)、果実の大きさなどを調べた。花には複数種の双翅目やニホンミツバチをはじめとする膜翅目、甲虫目などの多様な昆虫が花に訪れていた。気温などの天候により、昆虫が花に訪れる頻度が異なり、気温が低い日は観察される昆虫は少なかったため、訪花昆虫各種ごとに限られた個体数しか行動が観察できなかった。しかし、実験結果からは微生物が花蜜の成分や、結実率に影響を与えている可能性が示唆されているため、現在、解析を進めている。 さらに、結実率などは、果実食の鳥に影響を与え、ひいてはヒサカキの繁殖に影響をあたえている可能性があることから、予備的に、種子食の鳥類の観察も行った。その結果、ヒヨドリ、メジロ、ジョウビタキによる果実の消費が観察され、果実が熟した順に、これら鳥類により食べられていることが明らかになった。 また、ヒサカキとハマヒサカキ(Eurya emarginata)の2種の同属近縁種の花蜜の成分を測定したところ、両種間や花の雌雄でpHなどに違いがみられることも新たに分かってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
31年度実施計画にある、花蜜の成分の測定や、ヒサカキの花への導入実験を行い、ヒサカキとハマヒサカキの同属近縁種間、および雌雄の花で糖分以外の成分にも違いがあることなどを明らかにした。また、微生物により、花と送粉性昆虫の関係に変化がある可能性が示唆されてきている。実験結果などに基づき、室内実験や、野外実験で行う研究計画には多少の変更は加えているものの、研究の方向性に変化はなく、現在の実験遂行状況および、その成果により、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験を引き続き行うと同時に、得られた実験・測定結果をもとに、さらなる解析を行うことで考察を深め、また、その成果をもとに、室内での微生物や送粉者を用いた実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の室内実験を次年度に繰り越し、実験用消耗品の購入時期も次年度に繰り越したため、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 本年購入予定にしていた実験用消耗品の購入を次年度に行う。
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