研究課題/領域番号 |
19K16240
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松平 一成 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (60813441)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | テナガザル / 交雑 / 遺伝子浸透 |
研究実績の概要 |
類人猿の中で、現在進行形で交雑が観察されているテナガザルは、ヒトの進化における交雑の様式、影響を考えるうえで、非常に優れたモデルであると考えられる。本研究では、タイのカオヤイのシロテテナガザルとボウシテナガザルの間で行われている交雑が、2種の遺伝的構成にどのような影響を与えてているかの解明を目的とした。 昨年度報告した細胞株由来のシロテテナガザル(20個体)とボウシテナガザル(10個体)のGRAS-Di解析によって検出された遺伝子浸透の結果を投稿したが、多くの追加解析を求められたため、このデータの追加解析を中心に研究を実施した。まず、2種の分岐年代について、およそ350万年前(95%信頼区間:280万~410万)と推定され、先行研究においてmtDNAによって推定されていた分岐年代と概ね一致した。TreeMix解析により、遺伝子浸透の方向が、シロテテナガザルからボウシテナガザルへ、より多くあったことが示唆された。またAdmixture graphから、ボウシテナガザルのゲノムへのシロテテナガザルの貢献が10%程度と推定された。また、全ゲノムデータを用いて計算した結果も、同様の傾向を示した。 全ゲノムを用いて、集団サイズの変遷を推定した結果、2種の集団サイズは、300~400万年前頃から、異なる変遷をたどり、GRAS-Di解析によって推定された分岐年代を支持する結果となった。具体的には、2種の分岐以前は集団サイズが減少傾向にあったが、分岐後、シロテテナガザルの集団サイズが増加に転じ、100万年前頃に最も大きな集団サイズを示した後、現在まで緩やかに減少してきたと推定された。一方、ボウシテナガザルは、50~70万年前頃まで減少、その後、若干増加したが、20~30万年ごろに再び減少に転じ、以後、緩やかに減少してきたと推定された。現在、全ゲノムデータの解析をさらに進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は、リモートワークをせざる負えない状況などが重なり、実験が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
全ゲノム解析に加え、遅れているテナガザルの糞便試料由来DNAの解析を実施する。そして、先に得られた遠い過去に生じた遺伝子浸透と、近年の交雑によって生じた遺伝子浸透を区別する方法を確立し、近年の交雑によって生じた遺伝子浸透の検出を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりも、特に実験について遅れが生じているため。
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