研究課題
多様な食性(果実食、葉食、樹液食、昆虫食、肉食、その他)をそれぞれの種の特徴として持つ動物として多様化した哺乳類を対象に、特に霊長類の特殊性に注目して、その採食適応のゲノム・メタゲノム基盤と、種を越えた収斂進化について注目する研究を実施した。今年度はその研究計画の最終年度であり、試料収集・実験の着地点の模索、論文の執筆、次年度の研究への展開について吟味した。本研究で特に注目したことのひとつは樹液食である。樹液食は、哺乳類としては珍しい食性であるが、マーモセット類やスローロリス類などの霊長類や、フクロモモンガやオポッサムなどの有袋類が樹液を摂食する。これらに共通するのは小型の樹上性哺乳類であり、樹上で用意に入手できる繊維質として分類群を越えて収斂進化した食性であると言える。繊維の分解には腸内細菌が貢献する。コモマーモセット、スローロリス、オポッサムの複数種について、採食内容が既知の個体から糞便を採取し、メタゲノム解析を実施した。その結果、樹液の繊維分解に貢献していると思われる腸内細菌種をDNAで同定することができた。この内容については現在、論文の投稿を準備中である。また、シロアリ食をするオーストラリアのナンバット(フクロアリクイ)やハリモグラの全ゲノム解析をおこない、味覚に関連する遺伝子がシロアリ食に適応していることがわかった。シロアリは社会性昆虫のため、アリ塚から大量にタンパク源として採食することができ、多くの霊長類も利用している。霊長類の全ゲノムデータは2010年代から急速に増えているが、霊長類全種の全ゲノム解析に迫る国際研究プロジェクト(The Primate Genome Project)と連携体制と構築し、本研究計画のテーマである「ゲノム・メタゲノム収斂」を発展させる基盤が整った。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 6件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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