研究実績の概要 |
本年度は,レム睡眠時の夢の情動推定に応用するため、入眠時心像を体験した本人の報告と体験時の脳波等の生理反応から,機械学習技術によって入眠時心像の発生の有無を推定するアルゴリズムを構築することを目的とした. 実験参加者は健康な男子大学生4名を対象とし、日中に仮眠させたときの入眠時心像についての報告とその際の生理データを取得した.参加者には,実験前日の激しい運動,飲酒,実験当日の喫煙,カフェインの摂取を控えてもらった.実験当日は6時に起床し,13時に実験室に到着後,計測用のセンサ等の装着を行った.実験室において参加者を入眠させ,脳波をモニタリングした.入眠確認後,覚醒させ夢聴取質問紙で夢内容を聴取し,聴取後に再入眠させた.この流れを1セッションとして繰り返して行い,3時間にわたり行った.得られたデータに対し、ランダムフォレストとBORUTAを用いて入眠時心像の有無を推定する機械学習アルゴリズムを構築した。個人内アルゴリズムにおいて,判別精度は平均72.1±3.30%であり,すべての参加者でチャンスレベル50%を大きく上回る結果となった.また,各参加者で共通して選択される変数が確認できなかった.このことから,入眠時心像形成プロセスにおける生理反応には大きな個人差があることが示唆される.実際,統合アルゴリズムでは,判別精度は平均50.9±3.08%であり,チャンスレベル50%程度に留まった.本研究では,個人の脳波データを用いた時に入眠時心像体験の有無を判別できる可能性を示し,レム睡眠時の夢内容推定にも応用できると考えられる.
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