研究課題/領域番号 |
19K16250
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡邉 貴樹 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (90749798)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 小脳 / プルキンエ細胞 / シナプス刈り込み / プロトカドヘリン / 自閉スペクトラム症 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、自閉スペクトラム症(ASD)関連遺伝子プロトカドヘリン10 (Pcdh10)の小脳における役割を解明することである。本年度は、Pcdh10がプルキンエ細胞の一部の集団で発現することに注目し、発達期小脳で起こる登上線維-プルキンエ細胞のシナプス刈り込みがそもそも小脳全体で均一に進むかを、小脳スライス標本で電気生理学的に調べた。これまでに作製したPcdh10-DIO-tdTomatoマウスを利用し、GluD2-Creと交配したプルキンエ細胞特異的ノックアウトマウス(Pcdh10-cKO)と、コントロールとしてAldoc-tdTomatoヘテロマウスおよびPcdh10-cKOヘテロマウスを用いた。その結果、Aldoc陽性細胞の一部の集団およびPcdh10陽性細胞において、コントロールマウスでは登上線維のシナプス刈り込みが遅れて進むことが分かった。形態学的解析によって、Pcdh10陽性細胞はAldoc陽性細胞の一部の集団であることが判明した。一方、Pcdh10-cKOでは、野生型でみられたシナプス刈り込みの遅れが消失していた。これらのことから、登上線維のシナプス刈り込みは小脳全体で均一に進んでおらず、Pcdh10陽性細胞において遅れて進み、その遅れはPcdh10の発現に起因することが示唆された。さらに、GluD2-Creと交配したPcdh10-cKOマウスにASD様行動異常がみられるか検証した。Pcdh10-cKOマウスは、ビー玉埋めとグルーミングの頻度が有意に上昇する異常がみられた。これらの結果から、Pcdh10による登上線維のシナプス刈り込みの正常な遅れがなくなると、ASD様行動の一つである繰り返し運動が顕出する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、Pcdh10のコンディショナルノックアウトマウスを作製し、小脳スライス標本を用いた電気生理学的解析と行動解析を進められた。その結果、登上線維のシナプス刈り込みが一部の領域で遅れていること、その遅れがPcdh10に起因すること、そしてその遅れがないとASD様行動を引き起こす可能性を見出したという成果が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後も計画どおり引き続きPcdh10のコンディショナルノックアウトマウスの電気生理学的解析を行う。小脳虫部だけでなくASDに関連すると考えられている小脳半球でも同様のPcdh10依存的なシナプス刈り込みの遅れがみられるか明らかにする。加えて、プルキンエ細胞においてPcdh10を異所的に過剰発現することによるシナプス刈り込みへの影響を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の実験結果より、当初の計画で立てた仮説を発展させるための実験が生じたため、一部の実験を来年度に行い、さらなる追加実験のために使用することとした。
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