研究課題/領域番号 |
19K16251
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
坂本 寛和 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (10837397)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | シナプス |
研究実績の概要 |
シナプス伝達は脳機能の根幹である。本研究の目的は、シナプス小胞の放出位置を定める分子であるMunc13-1とシナプス小胞の放出効率を定める分子であるカルシウムチャネルのシナプス内空間配置及び両分子間の位置関係をナノメートルスケールで可視化解析することにより、シナプス伝達効率を決定する分子機構を解明することである。今年度に実施した研究では、海馬組織切片において高い効率でMunc13-1とカルシウムチャネル(Cav2.1およびCav2.2サブユニット)の多重染色を達成するために、蛍光免疫組織化学染色法の最適化を行った。また、染色した海馬組織切片を用いた超解像蛍光顕微鏡・STORMによる多色・三次元の分子局在測定法を確立した。さらに、蛍光免疫組織化学染色に用いる抗体に標識した蛍光色素の種類を変えることで、超解像蛍光顕微鏡・STEDによる二色の分子局在定量解析も並行して行えるように体制を整えた。STORM とSTEDによるMunc13-1とカルシウムチャネルの超解像蛍光顕微鏡観察にシナプスタイプ特異的マーカーの染色を組み合わせることで、当初計画していた2種類のグルタミン酸作動性シナプス(海馬CA1のシャッファー側枝シナプス及び海馬CA3の苔状線維シナプス)における計測に加えて、さらに2種類のグルタミン酸作動性シナプス(貫通線維シナプスおよび連合・交連線維シナプス)と2種類のGABA作動性シナプスにおける計測を実施することができた。これらの計測結果から、シナプスタイプ依存的なMunc13-1とカルシウムチャネルの分子発現量およびナノメートルスケールの空間配置の比較が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
蛍光免疫組織化学染色法を改良し、最適化することによって、非常に効率よくシナプス分子のラベリングを行えるようになった。その結果、Munc13-1とカルシウムチャネルの超解像蛍光顕微鏡計測を、当初計画していた以上に多様な種類のシナプスで実施することができた。また、超解像蛍光顕微鏡・STORMによる計測に加えて、STEDによる計測も並行して行える体制を整えたため、両計測技術の利点を活かすことでより研究が加速するものと思われる。これらの進展により、中枢神経系シナプスのシナプス小胞放出部位周辺で普遍的にみられるカルシウムチャネルの分布特性とシナプスタイプ特異的な分布特性を明らかにすることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
超解像蛍光顕微鏡計測データからMunc13-1とカルシウムチャネル間の位置関係を定量的に評価・解析する手法を構築する。具体的には、分子間の平均距離、相関係数及び動径分布を評価して定量する。これらの解析結果から、シナプスタイプ特異的な分布特性のモデリングを行う。また、本研究で構築した非常に効率の良いシナプス分子のラベリング法を活かし、Munc13-1とカルシウムチャネルに関連する他のシナプス分子の超解像蛍光顕微鏡解析を進め、シナプスタイプ特異的なナノメートルスケールの分布を可能にする分子機構を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の遂行初期に得られたデータから、超解像蛍光顕微鏡計測のための標本作製法・蛍光免疫組織化学染色法の最適化を行うことが優先であると判断し、当該年度に行う予定であった抗体作製及びSTORM顕微鏡用光学部品(フィルター・ミラー等)の調整を、次年度に行うこととした。そのため抗体作製及びSTORM顕微鏡用光学部品(フィルター・ミラー等)の調整に掛かる経費を次年度使用額として計上し、使用する。
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