研究課題/領域番号 |
19K16257
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
森本 菜央 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教 (30762249)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ショウジョウバエ / セロトニン / 応答行動時間 / 求愛 |
研究実績の概要 |
動物は、外界からの刺激に応じて、応答行動を決定する。このとき、動物の内部状態と照らし合わせた上で、その刺激に対して「価値判断」を行い、応答行動を調節するため、同一の刺激に対して、いつも同じ応答行動をとるとは限らない。このことを可能にする神経機構は部分的には明らかになってはいるものの、応答行動の 「量」や「時間」をダイナミックに調節する機構の全容は不明であった。申請者はこれまでに、ショウジョウバエを用いて、音の刺激により、数十分スケールで持続する行動を解析する系を独自に確立してきた。この行動実験系を用いたスクリーニングにて、申請者は、セロトニンが時系列での応答出力の調節に強く関与することを見出した。本研究では、この系を用いて、セロトニンが作用する細胞を単一細胞レベルで同定し、さらに、セロトニンが作用する細胞の活動性を解析することにより、セロトニンが複数の時間スケールにおいて、出力行動を調節する原理を解明することを目指す。 セロトニンが刺激に応じだ行動調節に関与することは見いだしたものの、興味深いことに、そのセロトニン作動性神経細胞そのものは、刺激に応じて応答変化はしないことを、これまでの年度において見いだしていた。さらに、これまでの年度において、セロトニンを受容する作用点となる神経細胞集団の候補を見出していた。そこで、当該年度においては、作用点細胞の神経活動イメージングを行う上で必須である、候補細胞集団の絞り込みを、行動実験を用いて行った。その結果、複数の細胞集団におけるセロトニンの受容が応答行動調節には重要であることを示唆する結果を得た。このことは、セロトニンが特定の神経細胞に作用するのではなく、求愛に関与する細胞に広く作用することで、動物の内部状態を規定することを示唆すると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経機構の解明のためには、責任神経回路を同定することが必須である。そこで、行動実験によるスクリーニングにて、セロトニンを受容する候補神経細胞集団の絞り込みを行い、応答行動の調節に貢献するセロトニンの下流神経細胞候補を同定することに成功した。さらに、ショウジョウバエのin vivo脳イメージングを行なっており、任意の神経細胞群の神経活動を解析することが可能である。さらに、セロトニンセンサーによるイメージングも計画している。以上により、本研究は概ね順調に進展していると評価で きる。
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今後の研究の推進方策 |
候補下流神経細胞が本当にセロトニンを受容しているのか、さらには、その活動性がセロトニンの受容の有無によりどのように変化するのかを、カルシウムイメージングおよびセロトニンセンサーによるイメージングで解析する。以上により、セロトニンがいかにして応答行動の調節に貢献するのか、その具体的な神経機構を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行中、興味深い研究結果を得るに至り、次年度に詳細な解析が必要となった。さらに、その解析に必要なツールを入手することができたため。 セロトニンセンサーをコードする遺伝子組換えショウジョウバエを用いて、セロトニンの受容をイメージングにて解析する。 繰越予算は、そのために必要な動物の飼育費用、試薬代等に用いる。
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