本研究の目的は、大脳基底核を構成する神経核である線条体および脚内核においてこれまでの自身の研究で見出してきた亜区域間の結合関係を免疫組織化学およびトレーサー注入実験を用いて明らかにすることである。 三年間の研究期間を通して、初年度は線条体の尾側部において従来の所見とは異なる免疫組織化学的性質を示す領域が存在することを見出し、Tri-laminar partと名付けたその亜区域における神経細胞の特殊な局在を学術雑誌に報告した。二年目には、脚内核を構成する既知の二種類の神経細胞に加えて、新たなサブタイプであるNitric oxide synthaseを有する三つ目の神経細胞の存在を見出し、その局在と投射先をまとめて報告を行った。本研究期間の最終年度であった三年目は、線条体尾側部において特殊な形態学的性質を持つ神経細胞を見出し、それについて得た所見をまとめて現在、学術雑誌に投稿中である。本研究の最終目的である線条体および脚内核における亜区域間の結合関係の解明については、線条体から脚内核への特異的な投射様式が存在することをトレーサー注入と免疫組織化学実験を組み合わせた方法によって明らかにしており、現在学術雑誌への投稿に向けて論文を作成している。本研究による線条体から脚内核への詳細な神経回路の解明は、大脳基底核における不明瞭かつ複雑な機能の理解を促進するだけでなく、パーキンソン病やジストニアのような基底核に関連する神経変性疾患の病態解明の一助にもなると考えている。
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