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2019 年度 実施状況報告書

経験が報酬刺激物質に対する嗜好性を変化させる機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K16265
研究機関東北大学

研究代表者

市之瀬 敏晴  東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (20774748)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2021-03-31
キーワード報酬刺激物質 / 慢性ストレス / ショウジョウバエ / ドーパミン
研究実績の概要

脳内報酬系を刺激する、高カロリー食品、アルコール、覚醒剤などの過剰摂取は肥満や依存症といった問題行動を引き起こす。しかし我々の多くはこれらの物質の一部に日常的に接しながら、その全員が深刻な依存症を発症するわけではない。報酬刺激の嗜好性には大きな個人差が存在する。その個人差の形成には遺伝要因もあるが、環境要因も大きく影響する:例えば貧困や虐待などの慢性的なストレスによって、高カロリー食品やアルコールに対する嗜好性が大きく上昇することが知られている。しかし、ストレスによって神経回路にどのような変化が生じ、行動パターンが変化するのか、シナプスレベルの理解は進んでいない。
本年度は、羽化直後のハエを生存に必要最小限なレベルまで希釈した餌で一週間程度飼育すると、砂糖、アルコール、覚醒剤など様々な報酬刺激に対する嗜好性と執着が対称群のハエと比べて非常に高くなることを見出した。この嗜好性の増大は、絶食による単純な空腹では引きおこされず、慢性ストレスによるものであると考えられる。さらに、慢性的な飢餓ストレスによって特定のドーパミン受容体のタンパク質量が変化することを発見した。また、受容体の量を遺伝学的に操作することにより報酬刺激への嗜好性を人工的に操作することに成功した。以上、慢性ストレスによる行動変容を、ドーパミン受容体の量変化から説明することに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

慢性ストレスが引き起こす行動変容の内容を詳細に解明し、そのメカニズムの解明への足掛かりを作った。

今後の研究の推進方策

今後は、慢性ストレスによってドーパミンにどのような分子レベルでの変化が生じているのか、より包括的な解明を目指す。具体的にはシナプスを構成する様々なタンパク質を蛍光タンパク質でタグし、その量や分布の変化を解明する。これに加え、トランスクリプトーム解析やトランスラトーム解析を適用することにより、ゲノムワイドに遺伝子発現変化に対する影響を調べることを検討する。

次年度使用額が生じた理由

次年度は、経験依存的な行動変容を引き起こす分子メカニズムについてより包括的な探索を行う予定である。本年度得られたデータにより、当初の計画よりも大規模に探索を行う必要性が判明した。本研究の完遂には、トランスジェニック系統の作製とその行動解析、形態学的解析が不可欠である。また、ゲノムワイドに因子を探索するためトランスクリプトーム解析を行うことも検討する。繰越金は、以上の解析に使用する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Dopamine Receptor Dop1R2 Stabilizes Appetitive Olfactory Memory through the Raf/MAPK Pathway in Drosophila2020

    • 著者名/発表者名
      Sun Huan、Nishioka Tomoki、Hiramatsu Shun、Kondo Shu、Amano Mutsuki、Kaibuchi Kozo、Ichinose Toshiharu、Tanimoto Hiromu
    • 雑誌名

      The Journal of Neuroscience

      巻: 40 ページ: 2935~2942

    • DOI

      10.1523/JNEUROSCI.1572-19.2020

    • 査読あり
  • [学会発表] Decoding distinct memories in the mushroom body of the fly brain2019

    • 著者名/発表者名
      Toshiharu Ichinose
    • 学会等名
      Neurobiology of Drosophila, Cold Spring Harbor Laboratory, USA
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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