研究課題/領域番号 |
19K16267
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
大谷 嘉典 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (30815973)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ミエリン / 翻訳リードスルー / L-MPZ / CMT disease / シュワン細胞 |
研究実績の概要 |
Large myelin protein zero (L-MPZ) は、myelin protein zero (P0) のC末端側に63アミノ酸が付加された生理的リードスルー産物で、P0と共に正常な末梢神経髄鞘の構成成分として存在し、病態との関連も示唆されているが、L-MPZの機能に関しては未だ不明な点が多い。 L-MPZの機能を明らかにするためにL-MPZ のみを発現するマウス (L-MPZ マウス)を作製し、解析を行ったところ、このマウスの成獣ではシャルコー・マリー・トゥース(CMT)病様の運動神経障害や髄鞘膜の異常が観察された。これらの結果を論文にまとめCommunication biology に掲載された (Otani et al., 2020)。 次に発達段階L-MPZマウス坐骨神経でのL-MPZの影響を検討した。その結果、生後21日目におけるL-MPZマウスの坐骨神経は正常マウスに比べ明らかな髄鞘形成の遅延が起きていることを明らかとした。また、P0のみを発現するマウス(P0マウス)の作製を行い、その表現型や形態学的解析を行った。このマウスでは形態学的な変化は認められなかったが、軽度ながらP0マウスにもCMT病様運動神経障害や伝導速度の遅延が認められた。今後L-MPZの研究を進めていくことで、L-MPZ自体の髄鞘における役割を明らかにできるだけでなく未だ不明な点が多いCMT病の脱髄機序の解明にもつながると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
L-MPZマウスに関する内容を論文にまとめることができた。研究代表者の所属移動に伴い、業務の引き継ぎなどがあったが、現在では引き継ぎもほぼ終了し、実験環境も整ってきている。現在はL-MPZマウスおよびP0マウスの形態学・生化学的な解析を引き続き行っていており、データも集まりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、L-MPZマウスおよびP0マウスの解析を続けていく。またP0とL-MPZの発現量比が1:1のL-MPZヘテロ接合体マウスにも軽度ながらCMT病様症状が認められたことから、このマウスを用いて、発達段階の髄鞘の変化および脱髄を引き起こす薬剤であるLysolecithinを投与し、脱髄からの再髄鞘化を観察し、L-MPZの発現量の変化がどのように髄鞘の正常発達および再髄鞘化の影響するのかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で物流が滞り、購入予定だった海外の抗体などの輸入時期が未定であった。そのため物流が改善されてから購入しようと考え、次年度に繰越を行った。今年度は物流も改善されると思われるので、使用計画に問題ないと思われる。
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