研究実績の概要 |
Large myelin protein zero (L-MPZ) は、主要な末梢神経髄鞘タンパク質であるmyelin protein zero (P0) のC末端側に63アミノ酸が付加された生理的翻訳リードスルー産物で、P0と共に正常な末梢神経髄鞘の構成成分として存在し、病態との関連も示唆されているが、L-MPZの機能に関しては未だ不明な点が多い。 L-MPZの機能を明らかにするためにL-MPZ のみを発現するマウス (L-MPZ マウス)を作製し、解析を行ったところ、このマウスの成獣ではシャルコー・マリー・トゥース(CMT)病様の運動神経障害や髄鞘膜の異常が観察された。これらの結果を論文にまとめCommunication biology に掲載された (Otani et al., 2020)。 L-MPZ マウスでは活発に髄鞘化が進む生後21日から末梢神経に異常きたし、成長につれてより症状が重症化し、さらに加齢が進むとさらに重症化することが明らかとなった。P0が原因で起こるCMT病では加齢に伴い症状が重症化するため、このL-MPZマウスではCMT病の臨床病態を良好に反映することが明らかとなった。この結果は第63回日本神経化学会大会にて発表を行った。現在は、P0とL-MPZの発現量比が1:1のL-MPZヘテロ接合体マウスにも軽度ながらCMT病様症状が認められたことから、このヘテロ接合体マウスを用いて、発達段階の髄鞘の変化および脱髄を引き起こす薬剤であるLysolecithinを投与し、脱髄からの再髄鞘化を経時的に観察し、L-MPZの発現量の変化がどのように髄鞘の正常発達および再髄鞘化の影響するのかを検討を行っている。またL-MPZマウスおよびP0のみを発現するマウスの解析を続けて、L-MPZとP0と髄鞘化の関連性を明らかにする研究を行っていく予定である。今後L-MPZの研究を進めていくことで、L-MPZ自体の髄鞘における役割を明らかにできるだけでなく未だ不明な点が多いCMT病の脱髄機序の解明にもつながると考えられる。
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