研究課題/領域番号 |
19K16268
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
石野 雄吾 近畿大学, 東洋医学研究所, 助教 (80625088)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | オリゴデンドロサイト / ミエリン / アルギニンメチル化 / PRMT |
研究実績の概要 |
本研究では、神経系の細胞の一つであるオリゴデンドロサイト(OL)を起点とした精神疾患の発症および病態の解析に焦点をあてて行っている。特にタンパク質の翻訳後修飾の一つであるアルギニンメチル化に着目してOLの機能制御がどのように行われているか新規の分子メカニズムの解明を目指している。 本年はまず、OLの分化過程においてアルギニンメチル化酵素(PRMT)の機能を阻害した際の影響について調べた。発達期のマウス脳からオリゴデンドロサイト前駆細胞を回収し、増殖過程を経てPRMTのノックダウンを行った。分化誘導をかけてOLの分化マーカーであるMBPの発現を確認したところ、MBP発現細胞の割合は有意に分化が低下した。 続いて、PRMTの、基質候補となるタンパク質の探索を行った。これまでにOLで重要な働きを担っていることが知られているタンパク質を候補にスクリーニングを行ったところ、複数のタンパク質がPRMTと結合することが確認された。いずれのタンパク質もアルギニンメチル化によって機能制御されているという報告は無いので、OLの分化調節における新規の分子メカニズムに迫ることができると期待される。特に、そのうちの一つのタンパク質については、質量分析法によってどの部位が実際にメチル化されるのか特定することができた。PRMTの機能抑制では多数のタンパク質アルギニンメチル化を同時に抑制した際の影響を見ることができるが、個別のタンパク質についての解析はできなかった。基質となるタンパク質およびそのメチル化部位が同定できたことで、個別のタンパク質についてアルギニンメチル化の詳細な機能解析へと展開することができるようなった。 最後に、2年目以降のマウスを用いた解析に向けて、OLにおける遺伝子操作が可能となるマウスを作成した。2年目以降に計画していたin vivoでの解析を予定通り遂行する準備は整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画通りに初年度はin vitroにおいてアルギニンメチル化酵素(PRMT)の機能抑制がオリゴデンドロサイトの分化に与える影響を解析することができた。また、新規にPRMTの基質なるタンパク質を同定するとともに、メチル化される部位の特定をすることができた。予定通り、個別のタンパク質についてアルギニンメチル化の意義を解析できるようになった。 また新規にオリゴデンドロサイトにおいて特異的に遺伝子操作を行うマウスを作成することで次年度以降に計画していたin vivoでの解析に向けた準備も順調に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度以降は、in vitroで得られた知見に基づいてPRMTの機能解析をマウスを用いたin vivoでの解析へと展開していく。オリゴデンドロサイト特異的に遺伝子操作の行えるCre driverとin vivoでの遺伝子導入技術を組み合わせることで、PRMTのオリゴデンドロサイトの分化や髄鞘化への寄与を解析する。加えて、アルギニンメチル化の基質となる個別のタンパク質についても、変異体などを用いることでアルギニンメチル化がオリゴデンドロサイトの分化や髄鞘化にどのような役割を担っているか解析する。
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