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2020 年度 実施状況報告書

連合学習過程で摂食コマンドニューロンに生じる可塑的変化のリアルタイム解析

研究課題

研究課題/領域番号 19K16275
研究機関国立研究開発法人情報通信研究機構

研究代表者

櫻井 晃  国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 主任研究員 (50749041)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードシナプス可塑性 / 連合学習 / カルシウムイメージング / 光遺伝学 / ショウジョウバエ / コマンドニューロン / 記憶
研究実績の概要

本研究では、同定された中枢単一ニューロンと行動の同時リアルタイム観察を通して、シナプスのミクロな変化がマクロな脳機能の変化としての記憶へとつながり、そして定着する過程を明らかにすることを目指す。これまでは、記憶形成に伴う神経活動の変化をCa2+イメージング法によって観察可能であるのは、連合学習の直後のみであったが、昨年度に開発した脳への酸素供給を改善する手法を応用することで、少なくとも1時間のリアルタイム観察に成功した。本研究のために新たに開発した連合学習実験系においては、条件刺激(CS)の直後に、無条件刺激(US)としてスクロース溶液を吻先端に接触させるという操作を繰り返すと、CSのみで摂食行動の一部である吻伸展が起こるようになる。このとき、摂食コマンドニューロンである「Feeding neuron」がCSによって活動する様子が観察される。このFeeding neuronの反応性は、その後も維持され、吻伸展と良く対応することがわかった。連合学習によって、CSの情報を伝える神経回路とUSの情報を伝える摂食神経回路のあいだに機能的なつながりが生じ、そして維持される。さらに、光遺伝学的な手法を用いた実験から、この機能的なつながりは少なくとも部分的にはFeeding neuronに統合されるシナプス入力の変化によることを示唆する結果も得られた。これまでは、脳への光照射によるダメージが実験結果に及ぼす影響が観察されていたが、実験条件の改善により、実験群と光の照射量は変えずにタイミングをずらした対照群とに明確な差があることがわかり、より強い証拠を得ることができた。また、CSやUSの情報をFeeding neuronへと運ぶニューロンを同定するための準備として、新たにLexA/lexAopシステムを用いてFeeding neuronにおける遺伝子発現の制御を行うための系統を作成した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題の要である長時間の蛍光ライブイメージングならびに光遺伝学的手法を用いた神経活動操作を行うことに成功したため。連合学習によって獲得された摂食コマンドニューロン(Feeding neuron)の条件刺激に対する反応性が持続する様子をCa2+イメージング法を用いて捉えることができた。さらに、光遺伝学的手法を用いた実験において、より安定した実験条件による対照実験を行うことで、少なくとも部分的にはFeeding neuron上のシナプスの可塑的変化によって、その反応性が獲得されたことを示唆する結果を得ることができた。また、Feeding neuronにおける新たな遺伝子発現制御システムの導入も完了し、Feeding neuronへと条件刺激あるいは無条件刺激の情報を伝達するニューロンを同定するための準備も予定通り進んでいるため。

今後の研究の推進方策

連合学習によって、学習前には反応しなかった条件刺激(CS)に対してFeeding neuronが活動し、吻伸展(摂食行動)がコマンドされるようになるということがわかった。そこで次に、CSによる入力に対するFeeding neuronの反応性が特異的に強化されているのかを調べる。具体的には、無条件刺激(US)であるスクロースによる味覚刺激に対する反応を、連合学習の前後で比較し、その影響を検討する。また、Feeding neuronにCSの情報を伝えるニューロン、あるいはUSの情報を伝えるニューロンの連合学習過程におけるライブイメージングや光遺伝学的手法を用いた活動操作実験を行うために、それぞれの同定を試みる。具体的には、GRASP法やtrans-Tango法を用いる。これらは、2つの細胞AとBがシナプス接続を持ち得るほどに近接しているかどうかを、蛍光タンパク質によって判定する実験システムであり、細胞AとBでは、それぞれ異なるタンパク質をつくらせる必要がある。そのために、ショウジョウバエにおいて最も一般的な遺伝子発現系であるGAL4/UASシステムとは独立に機能するLexA/lexAopシステムによってFeeding neuronにおいて任意の人工遺伝子を発現できるようにした。次年度は、GRASP法やtrans-Tango法を行うためにシナプス後細胞で必要となるタンパク質を、LexA/lexAopシステムによってFeeding neuronに発現する系統を作成する。そして、Feeding neuronと接続する可能性のあるニューロンではGAL4/UASシステムを用いることで、GRASP法やtrans-Tango法においてシナプス前細胞で必要となるタンパク質を発現させ、両者の接続可能性をテストする。

次年度使用額が生じた理由

実験動物飼育費を他の財源からの支出でまかなうことができたことが、次年度使用額が生じた主な理由である。Feeding neuronに条件刺激の情報を伝えるニューロンと無条件刺激の情報を伝えるニューロンを同定するために、様々なニューロンでGAL4を発現するショウジョウバエ系統を購入する必要があるが、その規模を当初計画よりも拡大し、スクリーニングをさらに加速させるために使用する。また、研究成果を論文として発表するために英文校閲及び投稿に必要となる費用にあてる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Synaptotagmin 7 switches short-term synaptic plasticity from depression to facilitation by suppressing synaptic transmission2021

    • 著者名/発表者名
      Fujii Takaaki、Sakurai Akira、Littleton J. Troy、Yoshihara Motojiro
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 11 ページ: -

    • DOI

      10.1038/s41598-021-83397-5

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Synaptotagmin 7 switches short-term synaptic plasticity from depression to facilitationby suppressing synaptic transmission.2020

    • 著者名/発表者名
      Takaaki Fujii, Akira Sakurai, Troy J. Littleton, Motojiro Yoshihara.
    • 学会等名
      新学術領域研究「スクラップ&ビルドによる脳機能の動的制御」第5回領域会議
  • [備考] 脳の短期記憶のスイッチメカニズムを発見

    • URL

      https://www.nict.go.jp/press/2021/03/01-2.html

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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