研究課題/領域番号 |
19K16276
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大島 知子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (50731783)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 網膜 / 感覚器 / シナプス / リボンシナプス / アクティブゾーン / 神経伝達 / グルタミン酸イメージング / カルシウムイメージング |
研究実績の概要 |
視覚情報は網膜の視細胞で電気信号に変換された後、双極細胞を経て神経節細胞に伝達される。視細胞や双極細胞の神経終末部には、神経伝達物質グルタミン酸を含むシナプス小胞を多数繋留するシナプスリボンという特殊構造があり、光刺激に対する持続的応答を可能にしている。このシナプス部位(リボンシナプス)に局在するシナプス関連分子群が見いだされてきたが、各分子の詳細な位置関係には不明点が多い。本研究は、20 nmの超高解像度を持つSTORM顕微鏡を用い網膜リボンシナプス関連分子群の位置関係を同定する。更に、視覚障害モデルでそれらの位置関係がどのように変化するか解析する。これらにより、網膜リボンシナプスにおける神経伝達の動作機序を解明することを本研究の目的とする。
平成31年(令和元年)度研究成果: ① 超解像顕微鏡による観察に先立ち、落射型顕微鏡を用いて網膜リボンシナプス関連分子に対する抗体の最適化を進めた。 ② 網膜シナプスリボンと機能分子との位置関係の精密な解析のために、生理的条件下での観察が必須と考え、シナプスリボンとカルシウムのリアルタイムイメージングを行った。キンギョ網膜のMb1型双極細胞の軸索終末部において、5-TMRIA(tetramethylrhodamine-5-iodoacetamide dihydroiodide)をコンジュゲートさせたCtBP結合ペプチドを用いてシナプスリボンを蛍光標識し、カルシウムシグナルとの位置関係を解析した。脱分極刺激で誘発されたカルシウムシグナルの大多数は、シナプスリボンの近傍で確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、初年度には超解像顕微鏡を使って正常網膜のリボンシナプスモデルを構築する予定であった。しかしながら、網膜リボンシナプス関連分子に対する抗体の最適化、および実験条件の検討に時間を要している。他方、網膜シナプスリボンと機能分子との位置関係の精密な解析のために、固定をしていない生理的条件下での観察が必須と考え、網膜のシナプスリボンとカルシウムのリアルタイムイメージングを行った。シナプスリボンを標識するペプチドに、緑色光励起の5-TMRIAを結合させて実験に用いているが、細胞障害性が強く長時間の記録に適さないことが分かり再考を要する状況であり、他の蛍光色素の使用を検討する。
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今後の研究の推進方策 |
落射型顕微鏡による網膜リボンシナプス関連分子に対する抗体の最適化を終えた後に、超解像顕微鏡(STORM)による観察を行い、正常の網膜リボンシナプスモデルを構築する。実験には、網膜スライス標本および単離網膜細胞標本を用いる。具体的な網膜リボンシナプス関連分子として、以下の候補を想定している。 ・プレシナプス:シナプスリボン、L型カルシウムチャネル、各種アクティブゾーンタンパク質 ・ポストシナプス:AMPA受容体、代謝型グルタミン酸受容体、シナプス後肥厚(PSD)など
シナプスリボンのリアルタイムイメージングに関しては、蛍光色素を5-TMRIAから同じく緑色光励起のCy3に替える、もしくは緑色光でなく青色光励起の蛍光色素に替える、などの方策を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度より現所属先に異動となり、現有備品として高倍率の対物レンズが利用可能になったため、本助成金にて購入する必要がなくなった。2019年度分助成金と2020年度助成金を合わせ、シナプスリボンを標識するためのCtBP結合ペプチド、国際学会参加旅費などに使用する計画である。
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