研究実績の概要 |
体性感覚情報は大脳皮質に伝達され、相応した行動・運動を行うために活用される。体性感覚情報は大脳皮質以外の脳領域にも伝達されるが、その伝達経路や機能的意義については不明な点が多い。本研究では、マウス口辺ヒゲ領域から視床―中脳領域area parafascicularis prerubralis(PfPr)で中継され小脳に至る触覚信号伝達経路をモデルとして、その経路の同定と機能的意義の解明を主な目的としている。 ヒゲ領域から小脳皮質プルキンエ細胞への信号経路には、下オリーブ核からプルキンエ細胞に投射する登上線維を介した経路と、小脳皮質顆粒細胞の軸索である平行線維を介する経路の2通りある。2018年に登上線維を介する経路において、PfPrが中継核であることを明らかにした(Kubo et al., 2018)。2019年度は、平行線維を介する口辺ヒゲ領域から小脳皮質プルキンエ細胞への信号経路の同定を目的として研究を実施した。ヒゲに投射する感覚神経である眼窩下神経を刺激し、小脳皮質プルキンエ細胞にて観察されるsimple spikeの応答を解析した。神経活動を抑制させるmuscimolを標的神経核に投与し、その神経核が平行線維を介する経路における中継核であるかどうか調べる実験を行ったところ、simple spike応答の一部が、PfPrに加えて、橋の神経核である尾側橋網様核・橋灰白質へのmuscimol投与によって抑制され、これらの脳領域が平行線維を介する経路の一部における中継核であることが分かった。また、逆行性トレーサー注入実験により、PfPrから尾側橋網様核、PfPrから橋灰白質への直接投射が確認された。
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