2020年度は、マウス口辺ヒゲ領域から小脳皮質プルキンエ細胞に至る触覚信号伝達経路のうち、小脳皮質顆粒細胞からプルキンエ細胞に投射する平行線維を介する経路の同定を目的として研究を実施した。この経路を信号が通過するとプルキンエ細胞においてsimple spike(SS)の発生が増減する。我々の実験では、マウスのヒゲに投射する眼窩下神経を刺激することにより感覚信号を入力すると、SSの発生が最初に2相性に増加しその後減少した。2019年度には2相のSS発生増加反応のうち潜時の遅い方の1相と、その後のSS発生減少反応にarea parafascicularis prerubralis(PfPr)と尾側橋網様核が関わることが分かっていたが、2020年度は、それに加えて橋灰白質も関わっていることが、橋灰白質に対するGABAA受容体アゴニストmuscimolの投与で神経細胞の活動を抑制する実験により明らかとなった。さらに、橋灰白質に逆行性トレーサーを注入する実験によりPfPrから橋灰白質への直接投射があることも分かった。
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